ムクムクと湧いてきたのは…

最悪、逆ギレされるのではないかとも予想していたので、快い回答に、ほっとしたものの、そこでムクムクと湧いてきたのは「あっさり返却を了承するってことは、わたしの所有物だって、認識してたってことだよね、じゃあ、なんで持っていった?」という疑問です。「単純に欲しかった」というのが前提として「許可を取るのが面倒だった」というのならば、他人を尊重していなさすぎるし、「いらないと思った」というならあまりに己に都合がよすぎる、「好きに持っていいと思った」のならば、あまりに自他境界が曖昧です。

いまだ、無事に戻ってきたその銃が目に入る度に、「彼は何を考えて、この銃を持っていったのだろうか」と首を捻ると同時に、やはり鍋もカメラも返してもらえばよかったという若干の後悔も拭えない。だってビタクラフトは、水を一滴も使わず、具材の水分だけで肉じゃがやカレーが作れる優れ鍋なのに、この先永遠に、その圧倒的パフォーマンスを活かされることがないなんて鍋が不憫すぎて不憫すぎて……。

Text/大泉りか

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