横浜は好きな街だけど

そう思っていたんだけど、Facebookを見ていて、自分の本当の思いにやっと気づけた。私は、あの横浜で過ごした学生時代の退屈な時期に戻りたくないし、できる限り思い出したくない。横浜は、好きな街だ。海も近くにあって、都会で、住みやすくて、私の思い出がたくさんあって、東京に行かなくたってなんでも揃っている。でも、嫌いだ。退屈な毎日や、忌々しい思い出が蘇るから。

私の地元は、不良だらけのかなりつまらない住宅街で、FBを開けば、地元に残った同級生がいつもいつも子どもの写真をアップしている。コメント欄では子育てについて相談し合い、お食い初めや七五三、誕生日だとか、色々な行事がくる度に祝い合っている。私には子どもがいない。その予定もない。だから、この話には入っていけない。

思い出すんですよね、自分が学生だったときのこと。お決まりな恋愛ばかりを取り上げたドラマに映画、誰にでも当てはまるような歌詞のラブソング。当時の私はテレビ以外に文化が広がっているなんて知らなくて、「みんなが好きなものをみんなと同じように好きになる」というのが当たり前だった。本当はよくわからなかったし、退屈だったのに、ずっと話を合わせていた。私の世界は学校の小さなグループの中にしかなかったし、それ以外に生きていく方法を知らなかったから。

退屈だった日々を捨てて、好きな生活を手に入れる

私は、結婚や出産を経験したりしないんだろうな、と最近はより強く思う。人と付き合うのは苦手だしラブソングも全然わからない。当たり前のように地元で自分の家族を作っている同級生とは話も合わないし、価値観も違うんだろう。一緒になってたまるかよ、と思っている自分も心のどこかにはいる。

きっと埼玉も千葉もどこも、あの退屈な空気は同じなんだろうなって思う。私が生まれ育っていないだけで。東京は、地元のあの空気が嫌いな人が集まる場所なんだろう。どういう事情を抱えていても、包み込んでくれる。すべての人をも受け入れてくれる場所でもあるんだろうな、とも感じている。

私はきっと地元には戻らないんだろう。戻ってたまるか。地元の奴らと同じ生活なんて、まっぴらごめんだ。あんな日々なんてさっさと捨てて、私は私の好きな生活を手に入れるのだ。だから私にとって、次の引越し先として、横浜が魅力的に映らないのだと思う。好きだけど、嫌いな街なのだ。

Text/あたそ

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