「自立」だけがすべてじゃない

「自立したい」から「自分に課した条件をすべてクリアして自立できたのに何も変わらなかった」という状態になって、今まで自分を奮い立たせていた気持ちは折れきったままだ。私は今後何を考え、どこを目指し、どうするべきなのかわからずにいる。

現在に至るまでの自分を振り返ると、好きになれない性別を脱ぎ捨てるためにやってきたこと、やってみたことはたくさんあった。

たとえば、恋愛的な意味で受け入れられるとか、同じくらい稼いでみるとか、性別関係なく自分で発信できる立ち位置を手に入れるとか。周囲の人に友達として認められるとか、特定の人に一目置かれる存在になるとか。自分に必要な知識を身に着けるとか、何事も一人で結論を下して行動に移すとか、意見を言うべき瞬間にきちんと発言できるとか、自分の考えを言葉や文字にできるとか。

そのひとつひとつをクリアしたら何か変わるかもしれない、もっと自分に自信を持てるようになるかもしれない、何か見えないものに対して罪悪感を持つこともなく、健やかに生きていけるかもしれない……漠然とそんなことを考えていたのだが、やっぱり私の性別は女のままで、加齢とともに多少の生きやすさを手にすることはできたけれど、何かが劇的に変わりはしなかった。いつまで経っても自分は自分のままだ。

性別が変わることは私の人生にはない。立場も考え方も性格も価値観も、過去から地続きになっていて、大きな変更点もない。自分を構成する「女」という性別を切り捨てることもできない。私は女でいる自分も、女として認識され続けることも受け入れるしかない。やっと自覚が持てた。きっと他の女の人はとっくに知っていることなんだろうな。

自立することと誰かを頼ること、人の存在を受け入れて人生に溶け込んでいくことは同時並行だっていいはずなのに。そういう気持ちの先に、結婚とか出産があって、みんな大きな決断ができるのかもしれない。

私がもう少しだけ意味を持って生きていくには、何が必要なんだろう。折れた気持ちをゆっくり取り戻しながら、考えてみたい。

Text/あたそ

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