人とデータを繋げない
「人を見た目で判断しない」とか「勝手に他人にレッテルを貼らない」なんてのは超当たり前のことで、そういうの嫌だよね〜やめた方がいいよね〜ってことを、多分私はこの連載の中で書いてきた。だからもちろんやめようと努めてるんだけど、人生にはバイブスが悪い時ってのがあって、そういう時は身勝手に他人を判断してしまう。そしてバイブスが悪い時に出た「この人はこういうタイプだ」って判断は絶対当たらない。
「この人はなんか意識高すぎて無理かも」って1ヶ月前に思ったくせに、今、自分に余裕のある状態できちんと話をしてみると「え、良い人じゃん楽しいんだが」身勝手な判断が身勝手にひっくり返る。あ〜もうずっと失礼! 最悪!
こんな失礼、今年の年末ではゼロにしたい。もうこんな自分嫌だ。どうしたら、自分の体調が悪くても初対面の人にきちんと敬意を持って接せられるんだろう。
もし、今日から一緒に仕事をする相手が火星人だったら、私は火星人に貼れるレッテルを持っていない。火星人にはこれまでの人生で出会ったことがないから、私には「火星人の傾向」というデータがないのだ。データがなければ予想もできないわけで、つまり目の前にいる火星人とガチンコで向き合ってデータを集めるしかない。これって、すごく健全なコミュニケーションだと思う。人間に対してレッテルを貼ってしまうのは、私の中に人間のデータがあるからだ。
「綺麗な白シャツを着ている人は喫茶店好きが多い」っていう、これまでの私の経験が、初めて会う人にレッテルを貼らせる。本当は、「人間」だということ以外に私の出会ってきた人たちと目の前にいる初めましての人の共通点はないはずなのに、性別や年齢、洋服なんかを勝手に共通点だと認識してしまうのだ。これはたぶん、脳が勝手にやってる部分もあるんだと思う。なんかさ、今までの経験から相手を判断した方が、生存率が上がりそうじゃん。知らないけど。だから、レッテルを貼っちゃうのは自分の性格が悪いせいとは限らない…と信じたい…。
そう考えると「目の前にいる人は、これまでに出会った人とどれだけ似た姿形をしていたとしても、今初めて会う新種だ」と脳に信じ込ませる必要があって、たぶん脳に人間だってバレるとデータ出してきちゃうから、だったら火星人だって思わせればいいんじゃない?! 火星人のデータは大抵ないから。これだ! これが解決策!
火星人って喋りやすいんですね
というわけでついこの間実際にやってみました。初めましての男性がドアを開けて部屋に入ってきた瞬間「え…火星人じゃん…」と心の中で呟いてから会話をスタートさせると、相手のどんな小さな動きも見逃したくないと思えるのです。レッテル貼る暇とかマジないから。超忙しい。
「この生き物はなんだ?」っていう圧倒的疑問を持ちながら会話をすると、いつもなら斜に構えて聞いてしまいそうな言葉とか、爪を噛みそうになる高そうなセーターも全く気にならなくなる。だってマジで知らない生き物だからね。
それと、火星人だと思い込むことで思わぬメリットもあって、それは「質問することが怖くなくなる」ってこと。人間同士だと「なんでですか?」とか「どういう意味ですか?」って聞きづらいこと多いけど、相手は火星人だから。育ってきた環境が違いすぎるわけで、圧倒的に違う相手には質問もしやすいのです。
ここからの1ヶ月は多忙オブ多忙で人に対して攻撃になっちゃうことも多いと思うけど、そんな時は「火星人だ…」って呟いてみてください。少しだけ、コミュニケーションが楽になるはず。
TEXT/長井短
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