決断を手放したい女性の心理を巧妙につく恋愛工学
恋愛工学とは、藤沢数希さんという謎の人物(肩書きは作家)が考案する恋愛術である。最終的に目的とするところが不特定多数の女性との後腐れのないセックスという理由で、恋愛術というよりナンパ術だろうと指摘する声も少なからずあるようだが、藤沢さんご本人はあくまでも恋愛術であると主張する。
恋愛工学が何たるかについては藤沢さんの発行されるメールマガジンで、毎週、実践者の声とともに紹介されているが、小説『ぼくは愛を証明しようと思う。』からも一部垣間見ることができる。
簡単にあらすじを紹介すると、主人公のワタナベは恋人に二股をかけられており、散々貢がされた挙句ふられる。立て続けに、ちょっといいなと思っていた子にもいいように引っ越しの労働力として使われるなど女性に搾取されっぱなし。絶望していた矢先、恋愛工学に基づき次々と女をものにする謎の凄腕ナンパ師、永沢と出会う。
永沢から「オープナー」「タイムコンストレイントメソッド」「ボーイフレンドクラッシャー」など、実用的なナンパの技術、セックスに持ち込む技術を教わり、非モテだったワタナベはみるみるモテ男になっていくのである。
技の名前から中2男子的なロマンを感じるからって決して侮ってはいけない。詳細は本を読んでいただくとして、これを読むと恋愛工学が、決断を手放したい女性の心理をいかに巧妙についているかということに驚かされるのである。
先に述べた通り、恋愛に関する決断はいかなる場合にも厄介だ。その後に生じる全ての責任を被れるのかどうなのか、悩めば悩むほど投げ出したくなる。
この点恋愛工学では、女性の側が決断したような、してないような、曖昧な態度を保ったまま男性がうまくことを進めるように設計されているのである。何かと物議を醸すのもこの点で、何も言わないことがノーの意思表示である場合に、男性の側がそれをうまく汲み取れなければ犯罪に繋がりかねない。
けれども、一方で女性の言う「男性にリードしてほしい」がいったいどういうことなのかと考えてみると、やっぱりそこには「言わずとも察してほしい」という意味合いが少なからず含まれているのも事実なのである。相手の作り出した流れに、ただ何も考えずに流されるその瞬間は楽だし、気持ちの良いものなのである。