お金がないと女性は自由になれないのか?

ウルフは『自分ひとりの部屋』で、「みなさんには、何としてでもお金を手に入れてほしいとわたしは願っています」と熱っぽく語る。しかし、お金が大切であることに異論はないけど、こうも金を稼げ金を稼げと言われると、「出産や育児で忙しい人は」「病気の人は」「そもそもあんまり働きたくない人(私)は!?」と、怠惰な私はげんなりしてしまう。

ウルフは、お金を稼いで自分ひとりの部屋を持つことは、「現実」を見据えて生きることだという。お金を稼ぐためには、綺麗事ばかり言っていられない。嫌なことも、理不尽なことも、場合によってはちょっと小賢しいことも考えなくてはならない。何より、自分の器の小ささや無能さに直面せざるを得ない。自分1人を支えるには、そうした清濁を併せ飲んだ「現実」を直視しなさいよと、おそらくウルフは言っているのだろう。「現実」を見据えることで、自由になれる。私は「努力さえすれば年収500万円くらいは誰でも稼げるはず!」とはまったく思わないけど、自由であるための手段のひとつとして「自分でそれなりの額のお金を工面できること」があるのは、やっぱりそれなりに妥当なのかなと考える。
願わくはもっとベーシックインカムなどが世界中で浸透して、能力や境遇や性別に関係なく、自分の生活は自分だけで面倒を見られるようになるといいんだけど……そんな社会が訪れるのはまだまだ先の話だ。しかしそれはそれとして、100年も近く前に語られたヴァージニア・ウルフの言葉は、今日もしっかりと重みを持っているのである。

初の書籍化!

チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。