香水診断をやってきた!結論、女は「新しい自分」に出会いたい

自分にあう香りを求めて

香水診断をした女性の画像

人工的な香りが苦手な私は、香水とは長いこと無縁の人生だった。アロマっぽい香りならなんとかイケるのだけど、ディオールとか、シャネルとか、ゲランとか、そういう「THE・香水」的な外資系ブランドの香りは軒並みダメ。特に苦手なのが、あのクロエの甘ったるい香りである。そのため、千早茜さんの小説『男ともだち』に出てくるハヤオが、セフレの女性たちに「クロエの香水とティファニーのブレスレットをプレゼントしている」というエピソードを読んだときは、「香害!」と戦慄してしまった。

しかし、香りは写真や言葉よりも強く人の記憶に残るというし、魅惑的な香りに包まれている人はそれがそのままオーラのように見える。
今までは「人工的な香り=無理」と決めつけて食わず嫌いしてきてしまったけれど、単純に、自分の好きな香りに出会えてこなかっただけかもしれない。そう考えた私は、その人のなりたいイメージや理想に合わせて、アドバイザーが相性の良い香水を選ぶ「香水診断」をやっているという代官山のサロンへと、いそいそと足を運んでみたのであった。

「新しい自分」になりたい?

ちなみに『男ともだち』では、主人公の神名が通っているバーのオーナー・露月さんが、自身のタトゥーについて語る場面でこんなことを言う。

「女の大半が蝶のモチーフを彫りたがるんだって。女は変わりたい、変わりたいって思う生き物みたいよ」『男ともだち』千早茜(著)

……話を戻そう。

「香水診断」をやってくれる代官山のサロンでは、アドバイザーが把握するため、診断前にアンケート用紙に「なりたいイメージ」を記入させられる。清楚、家庭的、凛としている、芯のある、色気のある、明るい、活発な。どんなことでも、いくつでも書いて良いらしかった。
机の上に数百個と並んでいる香水瓶に圧倒されながら、私はあまり深く考えずに「知的」「落ち着いている」などのイメージを記入し、アドバイザーに見せた。するとアドバイザーは、ちょっと怪訝な顔をして、「あなたみたいに、元々の自分とあまり乖離しないイメージを書く人は珍しいですね……」と言うので、私はそれでけっこう新鮮な気持ちになったのである。

誤解なきよう言っておくと、これは今の私が「知的」「落ち着いている」わけではなく、あくまで「元々の自分とあまり乖離していない」だけだ。つまり私が「明るい」「かわいい」「女の子っぽい」などの今の自分にはないイメージを書くと、「あ、この人はこういう風に自分を変えたいんだな!」とアドバイザーによく伝わるという意味である。

『男ともだち』によると、女がよく彫りがたるタトゥーは、自由に飛び立つ蝶。また代官山のサロンによると、多くの女性は、自分がこれまで選ばなかった香りを人に選んでもらうことによって、新しい自分に出会うことを望んでいる。
私は今の自分とそれほど乖離しないイメージをうっかり記入してしまったけれど(私の場合、真逆のイメージを獲得しようとすることに、なんか妙な照れが生じるんです)、苦手な香水を克服したいという動機自体はやっぱり「自分を変えたい」の一種である。
「新しい自分に出会いたい」は、女性が持っている普遍的な欲望なのかもしれない。