気持ちを打ち明けられない私が取り組んだもの
私は家族とも恋人とも友達ともきちんと話し合いをしたり、自分の意見を伝えたりすることも極端に避けてきてしまった。人と信頼関係を築くことに向いていないのだろう。信頼すべき人の見分け方も、どうしたら自分が正しい人間であるか信じてもらえるのかもわかっていない。いや、そもそも話をするのが苦手なのだろう。頭のなかで考えている能力と、考えていることを言葉に変換して口に出す能力が極端に乖離しているというべきか。いつも自分の口から発せられる言葉が抜け落ちているような、陳腐で中身のないものであるように感じてしまう。まあ、人と会って会話をするときは大抵お酒を飲んでいるときなので、中身のない会話しかしないのが常ではあるのだが。
ようは、自分の気持ちをきちんと打ち明けるのが苦手なのだ。その必要性すら感じていないのかもしれない。オチも解決方法も見つけられないような、とりとめのない話を聞いてくれる人もいない。そういう人に出会おうとする努力もできない。だから私は文章を書いているように思う。
文章を書くこと、ひとつの本を完成させることは、どこまでも孤独だ。自分の醜い気持ちと向き合いながら文章を整理し、過去の自分と何度も向き合わねばならないから。でも、何か気持ちを吐き出したいときに、満足ができるまでとことん突き詰められる。何かに違和感を覚えたり、もやもやとした感情を募らせたりする度に文章に乗せていたからこそ、私は人との関係性が希薄だったとしても孤独や寂しさを感じずに済んだのかもしれない。
いやあ、それにしても2冊目の本を出せるだなんてね。思ってもみなかった。それなりに上出来なんじゃないか、私の人生って。そうなればいいなという気持ちは心のどこかにあるものの、今後も文章を書くだけで生活はできないと思う。だから、会社員として働いているし、今後も続けていくつもり。
私の想像しうる“普通”から外れるつもりなんてなかったのに、気づけばとんでもないところにいるのは、私の人生ではよく起きる。書籍の出版も、そのいい例だ。何か、少しでもいい変化があればいい。私にとっても、実際に本を手に取って読んでくれる誰かにも。自分の在りたい姿や、本当にやりたいことを見つけるヒントになるような、少しでも背中を押せるような存在であればいい。
Text/あたそ
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