保守的な彼氏に門限を決められて

次にわたしに門限を決めたのは大学時代に付き合っていた同じ年の彼氏でした。農家の息子であることや元ヤンキーであったことと関係があるかないかはわからないけれど、保守的で「女はこうあるべし」という考えの強い人だった。彼が決めた門限は21時。大学に進学すると同時に、実家の門限は廃止されて外泊すら連絡せずに無断OKになったというのに、逆戻り! もちろん反論したけれど、「彼女が夜、外にいるのは心配だから」から始まり、「なんでそんなに外にいたいの?」「っていうか外で何をしているの?」「そもそもさっぱり信用できないお前が悪い」とヒスられ、最初は「心配とか信用できないとか、それはわたしの問題じゃなくってそっちの問題だから自分で解決して」などと真っ当に反論していたのだけど、つい面倒になって「はいはい、守ればいいんでしょ。そこまでいわれるんなら守ってやりますよ!」となったのだった。喧嘩は絶対に首を縦に振らないほうが勝つ。

が、同じ屋根の下にいる両親と違って彼の目の届く範囲にわたしがいるわけじゃない。だから彼の目を盗んではこっそりと外で遊んでいた。が、自由を求めているわたしと自由にさせておきたくない彼の関係がいつも良好なわけはなく結局わたしから別れを告げた。

家の外が好きなのではなく

その後は、「目のつくところにいると、帰ってこないのが心配で仕方がないから、家を出てくれ」と頼まれて実家を出ることにもなった。奇しくも出版業界という、当時は深夜どころか時には朝まで働くことが当然の業界に身を置くこととなり、すべては「外に遅くまでいるのは仕事」で済ませられるようになった。仕事で終わった後はもちろん新宿のゴールデン街に一直線だったわけだけれども。

わたしに門限を強いてきた人々は、口を揃えて「家の外がなんでそんなに好きなの?」と言っていたけれど、わたしは家の中も好きだったし、今は一歩も外に出ない日だってある。家の外が好きなのではなく、いや、好きではあるけれども、真実のところは「誰かに行動を制限されることが嫌い」だということに、なぜ皆、気が付かないのか。いや、気が付いているけど、制限したい自分を優先しているんですよね。わかってます。

Text/大泉りか