他人との接し方や距離感は人それぞれ異なる

相談文に「彼の様子を思い返してみたけれど怒っている様子もなかった」「共通の知り合いに聞いても、(LINEを未読無視したのは)なんとなくで特に理由はない、と返ってきた」と書かれていることからも、あなたの戸惑いは大きいのだろうと伺えます。
明確な理由がわからない、また状況から想像しにくいことから、何もしていないのに突然縁を切られた、という認識を抱いているのではないでしょうか。

ひとつお伝えしておきたいのは、他人との接し方や距離感は人それぞれ異なるということ。
相手の言動に腹が立ったり許容し難い扱いを受けたとき、関係性の深さ・付き合いの長さ・立場の違いなど関係なしに「その発言はよくない」「今の発言はとても不快だ」などと相手に面と向かって不快感や怒りを伝える人もいれば、嫌だなぁと思いつつ何も言わずにこれまで通りに付き合い続ける人、意志表明しないまでも心のシャッターを閉めて相手に気づかれないように徐々に疎遠にしていく人など、様々です。
もちろん、そういった対応は常に一貫しているわけではなく、状況や相手によって変える場合もあるでしょう。

ちなみにわたしは自分にとってどうすることが一番省エネか、を判断基準にして行動しています。
信頼している大事な人に対しては言葉を選んだうえで「そういうのは嫌だなぁ」「あんまりよくないと思うなぁ」と伝えるようにしています。もちろん、そういったことが滅多にないからこそ信頼のおける大事な人になっているわけですが、こういう風にきちんと伝える理由としては、相手が言葉が通じる人だから、そしてコミュニケーションの手間を省かないほうがよい関係を維持できると思っているから。

どうでもいい人に対しては、基本的に他人を変えることは不可能という前提がありますから、「今の発言はあり得ないな」「この人と話していると消耗するな」という気持ちを抱きながら、費やす時間や配慮が然したるものではないと思った場合は、不必要な軋轢を避けるために何も言わずに徐々に疎遠になっていきます。が、黙って飲み込むストレスのほうが上回ると判断すれば、自分のプライドを守るため、自分を嫌いにならないため、そして時には留飲を下げるために「いい加減にしろよ」「その発言は不愉快極まりないからな」と真正面からぶつかりにいきます。また、金輪際関わりたくない、関わっているのが無駄だな、むしろいっそのこと嫌いになってくれよ、という気持ちまで達すれば、あえて目に見えてわかるように距離を取ることだってあります。
要するに、自分の中で様々なメリット/デメリットを天秤にかけて、より面倒くさくないほうの行動を選択しているのです。

何をお伝えてしたいのかというと、相手から怒りや不快感が感じ取れなかったからといって、その人が怒っていないとは限らないということ。
たとえ腹が立っていたり不快に思っていたとしても、わざわざ第三者に報告しない人も多いのではないでしょうか。同じ職場であればある程度コミュニティが被っているでしょうし、共通の知人となれば余計な詮索や印象付けを避けるためになおさら、です。

ただ、彼がどう思っているのか、どうしてそういう行動を取ったのか、真意を知る術はどうしたってないのです。
縁を切られた側からしてみたら堪ったもんじゃないのかもしれませんが、もしあなたが彼に非常識な行動を取っていたと仮定しても、それをわざわざあなたに伝えてあげる義理は彼にはないのです。
たとえあなたの行動に非がなかったと客観的に判断できたとしても、彼の行動の理由はわからないままですし、わかったとしてもあなたにとって「え? その程度の理由で?」と理解し難い内容かもしれません。

あまりこういう表現は好ましくないのですが、人の地雷ってわからないものなのです。
だから、ネガティブな発言ばかりを繰り返していなかったか、会話の内容が陰口ばかりではなかったか、相手が気にしていたりコンプレックスに感じている部分をしつこくからかってはいなかったか、セクシュアリティや宗教観などセンシティブな話題でデリカシーのない発言をしていなかったか、自分の考えを押し付けて相手の意見や価値観を否定していなかったか、相手のプライベートを無視してしつこく連絡していなかったか、そういったことを改めてチェックしてみて、思い当たる節がなかったのであれば「仕方がない」で割り切るしかないのです。これはとてもかなしいことなんですけれどね。
ご自身でも仰っているように、人には性格やタイミングの合う/合わないがあります。だからこそ、縁が切れるのは仕方がない、抗いようがない、という事実を人生のどこかで受け入れなくてはいけない瞬間があるのではないでしょうか。