何かを好きで居続けることもまた奇跡だ

以前対談で、「全盛期に解散したほうがよかったバンドってあるじゃないですか」と言われたことがある。初対面の人だったし、なかなか反論もしづらかったので受け流してしまったが、私はどうしても同意できなかった。それは、この日みたいなライブに立ち会えることや長年活動を続けてきたアーティストの新譜に救われることが私には何度もあって、それは続けていないと得られなかったものだと実感しているからだ。

「THE NOVEMBERSが好き」というと、「昔はよくライブに行ってたよ」とか「前までは聴いていたけど」と言われることがある。そうか。残念。でも、少し気持ちがわかる。私も音楽性が変わってしまったバンドのライブに行かなくなってしまった経験が何度もあるからだ。リリースされた作品を見ているとジャケットからも彼らの音楽性が変わっているのがよくわかる。昔の作品が好きな人だったら、たぶん一番新しいアルバムを聴いたり久しぶりにライブを見たらあまりの変わりように驚くんじゃないか。それくらい変わった。

でも、ずっと同じで変わらないものなんてひとつだってない。あらゆるものが変わり続ける。その渦中で色々考え、それでも自分たちの理想の音楽を追求し、なおかつ私が自分でも信じられないくらい好きでい続けられるのは奇跡に近いことのように思う。初めて曲を聴いて衝撃を受けて、ライブを見て好きになって、それから15年以上姿・形を変えながらも彼らはずっと手が届かないくらいかっこいいままだ。悪い意味で期待を裏切られたことなんて一度もない。

久々に見た満員のリキッドルームのなかで、私はたまたま好きでい続けられたファンの一人にすぎない。何かを続けることと同じくらいずっと好きでいられることも難しく、だからこそ、胸を張って好きだと思えるバンドに出会って、その頃と変わらぬ熱量でステージを眺めることができるのが、私はとてもうれしい。

Text/あたそ