何かを続けることも、好きでい続けることも奇跡だ。THE NOVEMBERSの15周年ワンマン

何かを続けること・辞めないことの奇跡

by Fath

突然だが、私はTHE NOVEMBERSというバンドが心底好きだ。もちろん、他にも好きな音楽やミュージシャンなんていくらでもある。でも、私にとってこのバンドは特別で、自分の生活や成長、葛藤、あらゆる感情のすぐそばに存在していたと言っても過言ではない。おこがましい話ではあるが。

とはいえ、毎日聴いていたわけではない。インタビューやライブレポもチェックしなくなった。半年に1度のペースで行われるワンマンライブに必ず足を運ぶくらいしかできなくなってしまったが、いつも私のすぐそばに存在している感覚がなんとなくある。かっこよかった。今まで好きでよかった。胸を張ってそう言える。この音楽が今後も聴けるなら、私はこの先も生きていけると先日のワンマンライブを見ながら思っていた。

デビューから15周年を迎えた彼らを、私はその少し前から好きだった。当時ハイラインレコーズにデモCDを買いに行って態度の悪すぎる店員にイライラしたこと、すでに廃刊になってしまったQUIPマガジンの特典CDの2曲目に収録されていた『こわれる』を寝る前に必ず聴いていたこと、今はなき下北沢GARAGEにひとりで行ったときの心細さと疎外感、そういうのをうっすら思い出していた。今に至るまでTHE NOVEMBERSを通じて友達もできたし、フジロックのレポートも書いた。好きになっていなかったら、こうして文章を書くこともなかったかも。あらゆる面で、私の人生に影響を与えているのだと思う。

長いこと音楽を好きでい続けると、バンドは解散し、メンバーが脱退したり失踪したりもする。訃報を聞いたことも、全然ライブをやらなくなっていつの間にかHP自体がなくなって「解散したんだな」と悟ったこともある。学生時代はなんで? どうして? と責め立てたい気持ちを持っていたが、大人になって働き始めた今は、何かを続けること・辞めないことの難しさをひしひしと感じるようになった。だって、私には長い間続けられていることって数えるくらいしかない。仕事も今はたまたま続いているだけで、すぐに辞めてしまう。三日坊主が得意だ。

大人になると、仕事や結婚、子ども、健康、親の介護とか、自分だけではどうにも首が回らなくなって、辞めざるを得ない場面を何度も身近で見てきた。バンドの解散や脱退の報告を見ても、悲しいとか寂しいの感情よりも先に、辞めたい気持ち・止まりたい気持ちに寄り添ってしまう。

「続けたというよりも辞めなかったという感覚に近い」とアンコール前のMCで話していたけれど、それでも15年以上メンバーは変わらず、バンドが立ち止まることがなく、4人揃って続ける選択をしているのはファンからしたらとてもありがたいことだ。私は、人付き合いも親密な関係を築くのも苦手で、すぐ人と縁を切ろうとしてしまう。4人の大人が集まって活動を続けるってどういう気持ちなんだろう。まったく見当がつかない。

ライブ中は、昔のことや今のことを考えたりしながら、この光景は、続けることを選択してくれたからこそ見ることができたんだなと思った。たぶんそれは私だけではなくて、他のお客さんも本人たちやスタッフも考えていたはずだ。コロナで人が集まりにくかった約3年間を経て、なおさらそう思う。