恋愛に駒を進めなくてもいい。友人との丁寧な付き合いが私を救ってくれる

恋愛の駒を進めるつもりがない

by Taylor Grote)

今回は珍しく女と男の話をしようと思うのですが、そもそも私って全然モテないんですよね。それはまあ、私の女性としての魅力がない以前に人としての魅力すらも根本的に希薄だからということで、大人になった今、時すでに遅し! 致し方なし! ということで自己解決している。別にひねくれているわけではなく、事実を受け止めるのも大切なのである。

その割に、男女問わず友達はびっくりするほど多い。周囲に紹介したがりが多いからなのか、私が初対面の人とも物怖じせずにべらべら喋るからなのか、酒飲みだからなのか。コロナ禍で人付き合いがなくなってしまった今も、わらしべ長者の如く知り合いがちょこちょこと増えていたりする。ありがたいことですよ。

基本的に何歳か知らないし、職業も大体のことしかわからない。結婚しているか、恋人がいるのか、今恋をしているのかはあまり興味がない。本名がどんな漢字なのかも誕生日がいつなのかも私は答えられないけれど、音楽の趣味とか最近どんな映画を見ていたのか、何が好きなのか、それだけはよく知っている。そんな友達に囲まれ、私はなんとか人間の形を保ちながら生活をしている。

その友達のうちのひとりと先日飲んでいて、フジロックがどうだったとかあのバンドは正直いまいちだったとか職場がクソだとかあれこれ話していたんですけど、恋人ができたのだと言う。めでたいことなのでお祝いをしつつ「えー寂しい!」とか言いながら軽く嫉妬のジャブを打つと、「でも、お前口説いても全然見向きもしてくれなかったじゃん」と強めの右ストレートが飛んでくる。

いやあ、私まじでこういうの気づかないんですよね。空気も普段から読めないし人が何を考えているのか想像することもしないけど、泥酔するとそこに拍車がかかるみたいで。口説くならもうちょいはっきり口説けよ! と思わなくもないですけど。でもまあ、彼にはかわいい恋人ができ、我々は未だに友達ということで、また飲む約束をしてこの日はささっと家路に着く。

ふと思ったのだが、私に友達が多いのって恋愛に駒を進める気が一切なく、気づかぬうちにフラグをバッキバキに折りまくっているからというのも理由のひとつなのかもしれない。こういうこと言われたの、何回かあるんですよね。いずれも察することなく、何もわからなかったが。空気の読み合いが難しすぎるんですが、皆さんはどこでそのスキルを習得するんでしょうか?

駒を動かさないで 丁寧な付き合いつづける

こうして長いことネット上で色んなことを書いていると私にもアンチがいて、以前「お前に男友達が多いのは、誰からも女として見られてないからだろ」と言われたことをふと思い出す。それは多分その通りで、事実ではあるので言い返しようがない。

でも、なかにはもう10年以上友達で、お互いに長文の近況報告を送り合ったり、人生の大切な相談を持ち掛けてくれたり、同じライブを見てどうだったか最近見た映画のどこがよくなかったのかを言い合ったりする人が何人もいる。ずっと変わらず友達でい続けられるのってやっぱり私の女としての魅力の有無とか、相手の人の性別がどうとか、もう全然関係ないしそう単純なものではないと思うんですよ。

その友達が私のことをどう思っているのかは知らない。そこにもあまり興味がない。でも、少なくとも私は一緒になってくだらない話をしている時間が好きだ。また一緒に酒を飲みたいと思っているし、それなりの幸せを願っているし、たまにでいいから思い出して欲しい。まあ、考えていることと言えばそれくらいですけど、これだけたくさんの人がいるなかで、愛想をつかされたりしながら何年も何十年も友達でいてくれる人ってそれだけで貴重だ。だって私は、こだわりが強くてかなり面倒臭い性格をしていて、それは自分でもよくわかっているんだけど、どうすることもできないし。

年齢を重ねると、色々なものがあいまいになって捨てられるようになる。私の場合は他者への愛着で、誰かの関係性や未来について何かを期待することがなくなった。そういう刹那的な気持ちがあるからうまくいくんですかね? 

でも、やっぱり友達はいいなと思う。私をいつも救ってくれるし、98%くらいいい記憶しかないし。確かに私には人間的な魅力はないかもしれないが、過度に期待しすぎることもなく、駒を動かさないで丁寧に付き合いを継続させるのも、人としてとても重要な営みのひとつであるように思う。

Text/あたそ