わたしのファイターネームは…

本来、リングにあがるのならば、きちんと練習を積んでからのデビューとなると思うのだけど、“キャットファイト”という見世物は、技も闘い方も知らない素人であっても、それはそれとして存在が許されていたし、脱げる女性は、それはそれでおピンク要員として必要とされてもいた。そんな門戸の広さも女性たちの参入のハードルを低くしていたと思います。

それぞれの団体にはカラーがあって、ファイターたちにしっかり技を習得させるプロレス団体に近しいものもあれば、お色気に寄った団体もあり、その規模もクオリティーもまちまちでした。どこかの団体に属しているファイターが、別団体の試合に駆り出されることもあれば、なかにはリングネームを変えて、複数の団体に掛け持ちで所属しているファイターもいました。ちなみにわたしが所属していたのは、映画監督の中野貴雄さん率いる悪の軍団「ギャルショッカー」で、ファイターたちは皆、改造人間という設定でした。ファイターネームはゴールデンパピヨンリカ。蝶の怪人です。チョチョーッ!

同じリングで闘っていた女性たちを表す言葉

ブーム全盛期には、数多くのファイターたちが存在したけれど、もちろんそれだけで食えるほどの規模ではありませんでした。だから、誰もが何かしらの本業と掛け持ちでやっていたし、皆、若い女性たちだったから、就職や転職や結婚や妊娠や彼氏ができたことがキッカケで、キャットファイトからもあがったり、なんとなくフェイドアウトしていきました。そこでまったく連絡を取らなくなってしまった人もいるし、たまに会って飲む間柄を保っている人もいれば、いまも家族ぐるみで親しい付き合いをしている人もいる。

思惑や目的は違っていても、かつて同じリングで闘っていた彼女たちのことを表す言葉は、いったい何かと考えてみたら、“仲間”という言葉がピッタリで、自分のボキャブラリーからそんな、ジャンプめいた言葉が出てきたことに驚きましたが、いつか「キャットファイト大同窓会」ができたらきっと楽しいであろう。狭い世界ゆえ、かつて男を寝取ったとか、寝取られたとかで、その場でファイトが始まりそうで、ちょっと恐々する部分もありますが……。

Text/大泉りか