お互い交わらないところで、それぞれの幸福を手に入れればいい

相変わらず何もできないし、ひとりで生きていけるようなスキルがあるわけではない。ひとりで生きていくのは不安だ。かなり不安だ。誰かがそばにいてくれたら、と思うことがある。たまにどうにもならなかった将来を想像して、眠れなくなることもある。でも、私には頼りにできる存在がいない。誰かが私の近くにいることさえ許せない。壁を作っているのも、すぐに縁を切れる距離を保ち続けているのも、たぶん私だ。自分では普通を装っているつもりだけれど、私には矛盾する気持ちがある。そういうことを最近自覚するようになった。

そういう自分がたまに嫌いで憎くてたまらなくなるが、概ね満足してるんだろうな。自分で家族から離れて、仕事も選んで、ひとりで生きているこのサバイバル感とかさ。他の選択肢なんてなかったけれど。今の生活は、誰の顔色を伺う必要もない。いつどこで何をしたって、誰にも迷惑をかけない。他人をうらやむ気持ちだってあるし、家庭と子を持つ知人を目の前にしたとき、自分にはない何かに対して空しい気持ちを持ったりするけど、でもたぶんそれって私にとっての幸せではないもんね。考え方とか価値観が違うだけで。

人と自分を比べたって意味はない。だって、私はどう頑張ってもその人にはなれないから。人と比べることで意識できる自分の幸せなんてたかが知れている。でも、自分の考えていることや新しい価値観に気が付くことってある。

どこかで勝手にやっていてくれればいいや。お互いの幸福を、安らぎを、正しい生活を、まったく交わらないところで、手に入れられればいい。

Text/あたそ