100人いれば100通りの性癖がある

ところで、最初の『バチェラー・ジャパン』の話にもどる。「バチェラー」はハイスペイケメンでないとダメなのか、あるいは無職イケメンでも楽しいのか。

世間ではまだまだ「女性は高収入のイケメンが好き」が一般認識であるように思うけど、2次創作の界隈にいると、やっぱりそうでもないんじゃないか? という気が私にはしてくる。もちろんスパダリのキャラが好きだという女性はいるけれど、好きなキャラであれば彼を専業主夫にしたり、ヒロインキャラより収入を低くしたり、設定にだいぶ幅があることに気づく。2次創作はとにかく「萌え」であり、ダイレクトに自分の性癖が反映されるので、私自身も「あ、私、自分より収入の低い男性ぜんぜんアリなんだ」と改めて自覚することができた。他にも、オメガバースに3Pに「これはアリ」「これはナシ」といろいろな設定の作品を漁っていくと、界隈も本当に人ぞれぞれ。セクシャルマイノリティでなくただのノンケの女性であっても、100人いれば100通りの性癖があることに気づく。アンダーグラウンドの2次創作世界は、本当に自由だ。

事故のように恋に落ちる作品に出会わなければこんなことにはならないので勧めようにも勧められない部分はあるんだけど、川上弘美のいう「書きたい、何か書きたい」のピュアな衝動を思い出させてくれ、さらに自分の性癖に改めて向き合わせてくれる2次創作世界、もしもきっかけがあったら30〜40代の女性こそ、ぜひ飛び込んでみてほしい。そして恋に落ちる作品に出会うまでは、『神様』を読んでおいてほしい。私は今34歳にして、青春の日々を送っています……。

Text/チェコ好き(和田真里奈)

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『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです