「ヤれる/ヤれない」で私を見ないで
私の話を聞いてほしい。わざわざ人に会って話すまでもないし、たとえ誰かに会ったとしても話せば話すほど私の怒りは膨れ上がりそうなので、ここで成仏したい。「そういえば、私って女だっだんだ」と。
先日、どうしても友達に会わなければならない用事があった。無事に目的を済ませ、ごはんでも食べるかという話になる。2人ともワクチン接種済みだったし、お腹も空いていたし。でも感染者数増えているから少し不安だし、ちゃんと換気をして感染対策をしているお店でさっと済ませようか。ということで、最近の私は中華料理店に行き倒しているのもあって、この日も付き合ってもらうことになり、目的の店へと向かう。
店内は開けている雰囲気で、お客さんもまばら。席に案内され、どうする? 何頼む? 嫌いな食べものとかあったっけ? とか色々話をしながらメニューを眺めていると、隣の人が食べている何かがかなり美味しそうだった。あれはなんだろう? 写真の少ないメニューを見ていてもわからない。こういうとき私はいつも躊躇なく聞いてしまう。「すみません、今召し上がっているそれってなんてメニューですか?」と男性2人組に聞くと、「3ページ目の右にあるこれですよ!」と教えてくれた。中国語だし、馴染みのない漢字の並びでなんて読むかわからなかったのだが、指差しも交えながら他の料理も含めて無事に注文を済ます。
トイレに行こうと思って席を立つと、男性2人組の片割れに「どこ行くの?」と声をかけられる。イマイチ場所がわからず、きょろきょろしていると「あっちだよ!」と教えてもらったその瞬間、肩を組まれそうになった。内心「はあ~?」って感じだったのだが、できるだけナチュラルに避けつつ、トイレに向かう。用を足して席に戻ると、片割れは私の友達を含めた3人で何やら話をしていた。
この友達とはコロナ禍になってから会う機会も減ったので、近況報告も兼ねつつ、おすすめの映画の話、好きな音楽の話、老後の話などをした。話しても話しても話したりないほどだった。料理も美味しい。結局、全メニュー読めないんだけど。なんだか、久しぶりに楽しい時間を過ごせた気がする。
途中、男性2人組が席を立つ。「それでは」と挨拶をされたのだが、肩を組まれそうになった腹ただしさ、というか異質な感じが生理的に無理だったので少々冷たくあしらってしまった。だって、ムカつくんだもん。
「さっき、肩組まれそうになったから嫌だったんだよね~」と友達に事の顛末を話したら、ハ!っとした顔をして、私がトイレに行っている数分間で「彼女さんですか?」「狙っているんですか?」「あの子、今日絶対ヤれますよ」と言われていたことを教えてくれた。なるほど、テーブルに戻るときに話していたのはそれだったのか。私のこと、そんな風に見ていたのか。そう思うと、悲しいし無性に腹が立つし、自分の性別に嫌気がさしてくる。
- 1
- 2