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  • 2013.01.18

セックスと恋の呪いにかかった女たち(1)/二村ヒトシ×大泉りか

AV監督でありながら著書多数の二村ヒトシさんと、SM嬢の経験を持つ大泉りかさんの対談です。愛されること至上主義の恋愛に待ったをかけ、女子たち、そして男子たちももっと積極的になりながら人を愛することを学ぶべきだという二村さんの理論、ぜひお楽しみください。

 AV監督でありながら、『恋とセックスで幸せになる秘密』、『すべてはモテるためである』などの恋愛書の著作を持つ二村ヒトシさん。女性が積極的なアダルトビデオの先駆者であり、撮影現場で多くの女優の性を見つめてきた氏に今回の特集「セックスセンス」について語っていただきました。
(インタビュアー:大泉りか)

二村ヒトシ 大泉りか セックスセンス セックスの呪縛

セックスを“楽しまないといけない”という呪縛

二村ヒトシさん(以下、二村):実は僕は、女性向けメディアの「恋する女は美しい」と決めつける論調に批判的なんです。
自分を肯定できていない女性が恋に堕ちると、いっときは気持ちがアガるけど、やがて、ますます自己を肯定できなくなって、恋をすればするほど苦しくなっていきます
また、そういう女性は逆に男性から恋をされると、その相手をナメてかかったり、怖がったりして、ちゃんと愛せない。「私なんかに恋するこの人は、わかってない!」と心のどこかで考えてしまうから。
でも、そういう人ほど自分が恋することで心の穴を埋めようとする。
AMもロゴでいきなり「恋は人生だ 誰かを好きでいる素晴らしさを」って謳っていますよね。「好きでいること」が「愛」だとしたらそれは素晴らしいんですが、「恋」だとしたら、それはロクなもんじゃないよ、そもそも「恋は人生だ」ってテーゼが多くの女性を惑わしてるんじゃね? って言わせていただきたくて今日はやってまいりました(笑)

AM編集部(以下編集部):(苦笑)

二村:でも、女性向けのメディアは、そう書かないと仕方ないよね。読者の食いつきを考えると。

大泉りか(以下、大泉):女は恋することが大好きですから。だって、恋って楽しくないですか?

二村:楽しいですよ。そりゃあ、楽しい。でも、セックスの話でいうと、女が恋をしちゃっていて、一生懸命にセックスをするのはよくない

大泉:一生懸命なセックスってどういうセックスでしょう?

二村:女性が自分の性を楽しんで、自分が「されたいこと」をなるべく相手に伝え、自分からもアグレッシブに攻めて相手の反応の声を楽しむのは良いことです。僕が制作しているのも、そういうセックスを描いたAVです。
だけど、自分が恋してしまった男に媚びるため、男の心をつなぎとめておくために、がんばってセックスをしていると、その女性の心はどんどん病んでいく。だからセックスは諸刃の剣ですよね。

大泉:では、どうしたら自然にセックスを楽しめるようになるんですか。

二村:うーん、それは実に難しい。

大泉:そもそも何の疑いも持たずにセックスは楽しいものだと思い込んでましたが、じゃあ、何が楽しいのかって、ちゃんと考えたことなかったです。イキたいだけならオナニーのが手っ取り早いわけで……。

二村:AVの女優さんによくいるんだけど、彼氏が相手だとイケないけど、撮影だとイキまくるっていう女性。
これ、皆さん勘違いしがちなんですが、男優がセックスが上手だからってわけではないんです。彼氏の前で恥ずかしいところを見られたくないからイケないだけなんですよ

大泉:でも、その“恥ずかしい姿”は、男からするとかわいいところですよね。

二村:そう。ここにも男女の不均衡がありますね。情報が行き渡ってない。まぁ行き渡ればいいってものでもないですけど。

大泉:でも、情報を知って、頭では理解しても、感情がついていかないってこともあります。例えば、私は官能小説で女の痴態を散々書いてることもあって、“恥ずかしい姿”は“男が萌えるかわいい姿”なんだと頭では理解していますが、実際に男の人の前で乱れられるかというとまた別で……。
でも、アダルトビデオを見た時に「喘いでる女の人ってこんなに綺麗なんだ」って思ったことがあったんです。なんで、一度、自分のオナニーを動画で撮ってみるのはどうですかね。「意外とエロい……」って思ったりするかも。

二村:いやぁ、自分が喘いでいるところを自分で見ても「ブスだなぁ」って思うだけだと思うよ。自己肯定感の低い人は特に。

大泉:確かに自分の録音された声とか聞くの、すごく苦痛です。

二村:だから、「自分が気持ちよがってる顔は、自分にとっては肯定できないけど、どうやら相手はこれが好きらしい」ということを認めるしかないんです。

モテる男の“心の穴”に振り回される“恋する”女たち

大泉:ところで、こうした恋とセックスについて悩む女性たちに向けて著書を上梓されたわけですが、反響とかってどうでした?

二村:めちゃくちゃありますね。ツイッター上とか、エゴサーチをしていると、いろいろ有益な情報が入ってきます(笑)。ただ、そんなに即効性のある本ではないので、「なるほど!」といってくれる人はいますが、その後、幸せになった、という話は聞きませんね。どうしたら幸せになれるんだろうなぁ。

大泉:恋をしている時点で、「あの人を好きになっても幸せになれない」って思っても止められないですよね。止められたら、それは恋じゃない。

二村:そうなんですよね。

大泉:だからって、「彼のことを思っているだけで幸せ、見返りなんて求めないの」っていって耐え忍ぶのも、それはそれで無理があるじゃないですか。ストレスが溜まっていくっていうか。

二村:そう、溜まっていく。だから、うっかり男の側から「最近の女には愛が足りないよ」なんて言うと、女は怒り始めます

大泉:「こんなに与えてるのに!」って?

二村:いや、「大きなお世話よ!」って。
そもそも、そういうことを言う男側にも、女に対する憎しみがある。実はモテている男ほど女を恨んでいたりもするじゃないですか。
で、「メンヘルはこうだよ」とか「恋に悩んでいる女はこうだよ」とか男がいうと、その男に恋している女はそれでしょげてしまうし、それ以外の女は怒りますよね。こうして、意見が深まるのではなく喧嘩になってしまう。

大泉:負のスパイラルですね。なんとかならないんでしょうか。

二村:解決方法は、ひとりひとりが目の前の人を愛すること、それ以外はない。

【次回に続く】
次回は「愛と性欲」について、お送りいたします。

Text/大泉りか

二村ヒトシ
アダルトビデオ監督。1964年六本木生まれ。慶應義塾幼稚舎卒で慶應大学文学部中退。Dogmaからリリースした『美しい痴女の接吻とセックス』『ふたなり』『妹に犯されたい』『集団痴女』『すべての女性があなたより背が高い世界』『マ○コがマ○コに恋をする理由(わけ)』各シリーズで、画期的なエロ演出を数多く創案。現在は、MotheRs(痴女専門)・美少年出版社(女装っ子専門)・LADY×LADY(レズビアン専門)・欲望解放(本人のセックス専門)の4つのAVレーベルを主宰・経営するほか、ベイビー・エンターテイメント、ソフト・オン・デマンド、エスワン、ムーディーズ等からも監督作品を発売。また今年よりソフト・オン・デマンド制作部門であるSODクリエイト社の顧問(若手監督への「エロとは何か」指導を担当)にも就任。
著書に『恋とセックスで幸せになる秘密』(イースト・プレス)『すべてはモテるためである』(イースト・プレス/文庫ぎんが堂)等。
公式サイト:nimurahitoshi.net
twitter:@nimurahitoshi@love_sex_bot

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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