「知的な女性に畏敬の念がある」男友達に羨ましがられたセックス/中川淳一郎

東大出身の友人・田中(男)とは社会人になりたての頃、よく酒を飲んでいたが、彼には一つの野望というか夢があった。彼は酔っ払うと必ずこう言った。

「オレさぁ、とにかく高学歴の女の人とエロしたい! 在学中は男女比がいびつで『男あまり状態』だったため、東大生の彼女なんて作ることができなかった。今だったら彼氏のいない東大卒の社会人が案外多いんじゃないかと思うんだ」

なぜ高学歴な女性とエロをしたいのかを聞いたらこう答えた。

「元々オレは在学中も東大に行く女子学生に対して畏敬の念みたいなのを持っていたんだよ。在学中、なんとか誰かとヤりたかったけど、無理だった。だから、卒業した今、畏敬の対象である才女が全裸になってオレの下で悶えているシチュエーションをとにかく体験したいんだよ」

何やら妙な性癖であるが、結局田中は願望を叶えることなく結婚をした。今でも「結局オレの夢は叶わなかった。まぁ、仕方がない。来世の夢に取っておくよ」とのことで、現在の妻との離婚や不倫を考えていないという点においては実にまともな考えではある。

田中の論を散々聞いていただけに、僕も高学歴女性とのセックスについては若干の興味があった。週刊誌の袋とじ特集で「ついに〇〇大学の才媛が脱いだ!」などがあるし、高学歴AV女優は黒木香をはじめ、人気になる。田中的嗜好を持つ男は知性とのギャップがたまらなく好きなのだろう。

僕が体験した高学歴女性との一夜

そんな前置きがあったうえで、僕も高学歴女性との一夜がある。26歳だった自分がイベント制作会社社員としてかかわった展示会イベントの打ち上げの立食パーティーにいたクライアント側の担当者・本橋さんだ。31歳だという彼女とはこれまでに何度か喋ったものの、重荷が取れたのかリラックスして、渋谷のパーティー会場では酒をたくさん飲んでいた。

そして僕と話したのだが、基本的には「本橋さん、おつかれさまでした」「ニノミヤさんもよくやってくれましたね、ありがとうございます」といった慰労の会話をしていた。クライアントのお偉いさんの挨拶とともに打ち上げは終了。その後は三三五五解散となったが、本橋さんがこっそりと言ってきた。

この後もう一軒行きませんか? 神泉(渋谷の近く)の坂に〇〇というバーがあるので、そこで待ち合わせましょう」

僕の会社と彼女の会社の間には広告代理店が入っているため、今後彼女と仕事をすることはないだろう。それならば「公私混同」とは言われないはずだ、と勝手に自分を納得させ、誘いを受けた。本橋さんは某難関大学出身であることは知っていたため、この誘いをされたとき、田中のことを思い出した。果たして今晩僕は本橋さんとその行為に至るのか? 神泉ということは円山町のラブホテル街からは近い。

15分後に僕は先に〇〇に到着し、それからしばらく待っていたところで彼女はやってきた。「すいませんね、色々と挨拶とかありまして遅くなりました」と言い、そこから再び乾杯をし、再度イベントの苦労を振り返り、しみじみとした。

我々は杯を重ね、終電はすっかり終了。この場合、僕は「終電の時間が終わってもそのまま飲み続ける女性を誘っても失礼ではない」という過去の経験則から本橋さんをラブホテルに誘うことにした。