悪魔と契約してまで望んだ愛『ファウスト』

 ドイツの文豪ゲーテの名作『ファウスト』を、ロシアの名匠アレクサンドル・ソクーロフ監督が新たな解釈で映画化。
第68回ベネチア国際映画祭ではグランプリ(金獅子賞)を受賞した傑作がついに公開されます。
主人公ファウストをドイツの人気俳優ヨハネス・ツァイラー、高利貸ミュラーをロシアのダンサーアントン・アダシンスキーが熱演。ファウストが心を奪われるマルガレーテ役の新星イゾルダ・ディシャウクは、まるでフェルメールの絵画のような美しさと静けさを持っています。
全編が芸術性に富んだ演出と映像で、その鮮やかな色彩、ファンタジックな世界観に酔いしれてしまうこと間違いなしです。

 19世紀のドイツ。神秘的な森に囲まれたとある町で、あらゆる地上の学問を探求したファウスト博士(ヨハネス・ツァイラー)は研究費を使い果たす。生きる意味を探す彼は”魂”のありかを見つける研究を続けるために、悪魔と噂される高利貸ミュラー(アントン・アダシンスキー)のもとを訪れた。 「生きる意味を教えよう」と囁くミュラーに導かれたファウストは、純真無垢な少女マルガレーテ(イゾルダ・ディシャウク)と出会う。
一目で彼女に心奪われるファウスト。しかし、ミュラーの策略によって彼女の兄を誤って殺してしまう。
それでも彼女の愛を求めるファウストは、自らの魂をミュラーに差し出す。悪魔と契約を結んでしまったファウストと、マルガレーテの愛の行方はいかに――?

 時と空間を自由自在にあやつる斬新な演出と幻想的な映像が印象的で、それらはあなたをあっというまに美しくも摩訶不思議な世界に連れて行ってくれるでしょう。
そして、あなたには悪魔に魂を売ってまでして、手に入れたい愛はありますか。そこまでしてあなたは愛がほしいですか? ファウストの決断を、あなたはどうとらえるでしょうか。
哲学的なストーリーで難解なシーンもありますが、ベネチア国際映画祭の審査委員長ダーレン・アロノフスキーに「観た人を永遠に変えてしまう映画がある。この映画がまさにそうだ」と言わしめた本作。
この映画からゲーテの数々の作品に入ってみるのもおすすめですよ。

6月2日(土)よりシネスイッチ銀座にてロードショー

監督・脚本:アレクサンドル・ソクーロフ
キャスト:ヨハネス・ツァイラー、アントン・アダシンスキー、イゾルデ・ディシャウク、ゲオルク・フリードリヒ、ハンナ・シグラ
配給:セテラ・インターナショナル
原題:Faust/2011年/フランス映画/140分

Text/Michihiro Takeuchi