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  • 2015.01.05

モザイクをかける気持ちで暗くする ブサイクというほどじゃないけど

【1月テーマは初体験】恋愛にまつわるいやーな思い出、モヤモヤする思い出、ありますよね。眠れない夜に苦い記憶でクヨクヨしていると、いつしかそれは怨霊のように膨らんでしまうかもしれません。そんな怨霊ラブメモリーを短歌にすることで、成仏させてやりましょう。エロ歌人佐々木あららが、あなたの恋の「除霊」を短歌でお手伝いいたします。

佐々木あらら 短歌 エロ短歌 怨霊 恋愛 初体験
Eleazar

 ハッピー・ニュー・イヤー。

 AMの妖艶な読者の皆さまはどのような年越しを過ごされたのでしょうか。

 ササキはお正月より、大晦日の夜の緊張感が好きです。大晦日とか時限爆弾とかロケット発射とか、カウントダウンってなんだかそれだけでちょっと興奮しますよね。

 それで思い出すのが、昔、阿佐ヶ谷のバーで出会ったカウントダウンフェチの男。

 彼はセックスのとき女の子に目隠しをさせて、挿入直前にその子に「10、9、8……」とカウントダウンさせるのだそうです。

 で、「0」と同時に、入れる、と。

 カウントダウンのどきどき感で、女の子も興奮が高まるのだとか。

 真偽のほどは知りません。どなたかぜひチャレンジしていただきたい。

 カップルを引き裂くような結果になっても責任は取りませんけど、その悲劇を短歌にしてくれたら、このコーナーでその怨念を成仏させるお手伝いはいたしますよ。

 では、1月からの新テーマ「初体験の怨霊ラブメモリー」にご投稿いただいたエピソードを鑑賞していきましょう。

10回の失敗にも負けず……

タンポン太郎さん(神奈川県)
エピソード:

 お互いが初体験での夜。
 相手の子は「痛い、痛い」と叫び続けるし、僕は僕でどこに入れればいいのかもイマイチわかっていないから、結局あきらめることに。
 その後も何度か試みたものの、結局同じようにあきらめた夜が10回ほどありました。
 AVのモザイク部分を穴が開くほどにらみつけ(実際穴は開いているのですが)、なんとか11回目で成功しました。あんな達成感は、小学校のときの逆上がり以来です。

 11回! 負けないことや投げ出さないことや逃げ出さないことや信じ抜くことの大事さを実感する感動的な話です。大事MANブラザーズバンドのあの名曲は、きっと処女と童貞の苦闘の初夜を歌ったものだったに違いない。涙見せてもいいよ。痛いし。

思ってたよりも思っていたよりも思ってたよりも処女は手強い(タンポン太郎)

という短歌も添えていただきました。前半部分をたっぷりつかった連呼に10回の試行錯誤の重みがうかがえます。とはいえ、短歌よりもドキュメンタリーとかに向いているエピソードかもしれませんね。「プロジェクトX」風に仕立てて。

 10晩の工夫と失敗を丹念に追った再現映像のあと、ついに11夜目、もう二人の関係もこれまでか、とハラハラさせた末に、田口トモロヲさんの声で、

「その瞬間……太郎のペニスが、入った……」

みたいなもったいぶったナレーションがあって、中島みゆきが流れるわけです。スタジオに戻ると、きらきらした目の膳場アナウンサーが元童貞と元処女の二人に質問。

「いかがでしたか」
「いや、もう、とにかく痛くて痛くて……」

 ええっと。

 何が言いたかったかというと、短歌に向いているサイズのエピソード、他の表現に向いているエピソード、というのがあるんじゃないか、ということでした。

短歌になりそうな言葉を探そう

 とはいえ、タンポン太郎さんの話には、節々に短歌になりそうなエッセンスが満ちていますね。

 恋愛の怨霊などまったく見当たらない青春の初々しいエピソードかと思いきや、アニメ風の二頭身の妖怪が隠れていた感じ。

 たとえば、「AVのモザイク部分を穴が開くほどにらみつけ(実際穴は開いているのですが)」のところ。

 短歌はこういう言葉遊びととても相性がいいです。バカバカしいダジャレも「これは掛詞だ」と言い張ってしまうと案外いいものに見えたりすることがあります。

 この部分をほぼそのまま短歌化するなら、

モザイクを穴があくほど見つめてる(じっさい穴はあいてるのだが)

 みたいになるでしょうか。

 もうちょっと真顔でいったほうが、エロ短歌のバカバカしさが引き立つかもしれません。

モザイクを薄目でにらむ おぼろげに見える夢ほど祈りは強く

 また、「あんな達成感は、小学校のときの逆上がり以来です」というフレーズにも、ちょっとした怨霊が隠れていますね。なんでそんなにはしゃいでるんだよ、みたいな。ここも短歌にしてしまいましょう。

童貞は大人になった 逆上がり初めてできた子どものように

 こんな感じでいかがでしょう。

 他にも、「女の子のほうは痛くてしかたないのに、ひとりで達成感に満たされている男のバカさ加減」あたりに短歌になりそうな怨霊が棲んでいそうです。

 これはタンポン太郎さんほか、みなさんへの宿題で。

男女間にある難問「照明問題」

たむこさん(埼玉県)
エピソード:

 恥かしさから、灯りを消してもらったのですが、雨戸までしめてくれたので、まったく何も見えないなか激痛だけ走った初体験でした。
 とにかく痛かったです。

 照明問題は、男女の間に広がる闇の一つですね。

「暗明暗の法則」というのがあります。もちろんいま適当につくりました。

 経験が少ない女性は恥ずかしさから「真っ暗」を好み、少し余裕が出てくると好きな相手の顔も見える「薄明かり」がいちばんリラックスできるようになり、さらに上級者になると目隠しプレイなど「真っ暗で何をされるかわからない不安」にむしろ興奮するようになります。

 一方、男としては、性的興奮という意味では明るいほうがいいらしいです。基本、奴らはAVの追体験みたいなセックスを好みますし、暗闇でするなんて「画面が映らないAV」みたいなものですから。

 ひどい話なので他人事のように言ってみました。

 とはいえ、実務的な面で言っても、戦局が進むうちにイレギュラーな姿勢になり、うっかりおでこに膝蹴りが入ってレフェリーストップ→結局電気をつける羽目に、という展開もままありますから、少しぐらい明かりをつけておくほうが安全で安心です。

 ぼんやり相手の姿が見えるぐらいのほうが想像力もかきたてられますからね。

 そういえば、僕の初体験は、夜は暗くて入れられず、翌朝、朝日の入る部屋で慎重に視認した上で成功しました。相手の女性の心が広かったんだな、いま思うと。

短歌は「一点豪華主義」!

 さて、たむこさんからいただいた短歌はこちら。

恥じらいで灯りを消して初挿入 暗闇の中 激痛走る(たむこ)

 これはもったいない! あらすじだけをたどってしまって、せっかくの怨霊がすくいあげられていない気がします。

 短歌は「一点豪華主義」みたいなところがあります。腕時計が高級だと、安くてシンプルなワンピースも不思議と高級感が出るという、あれです。

 ファッションと同じで、短歌の中に話のすべてを盛り込もうとすると、ごちゃごちゃして平凡な見た目になってしまいます。

 どこか一点、売りになりそうなポイントを拡大して切り取ると、結果的にその背景の物語も伝わったり、受け手が脳内で補完してくれたりするものです。

 たむこさんのエピソードの怨霊ポイントは「暗闇」に潜んでいる気がします。

 たとえばこんな部分を切り取ってみたらどうでしょう。

暗くして あなたの顔はよく見えてわたしのおなかは見えないぐらい

「恥じらい」と「暗闇」の理由を拡大して、具体的で都合のいい願望に焦点をあててみました。でも照明問題の本質って、こういうことだよね?

 男の側の願望に焦点をあてたら、こんな感じ。

もうちょっと明るくしてもいいかなと訊いても処女は暗い目のまま

 男のエゴとともに、女の子の悲しい痛みも伝わってるのではないでしょうか。

 でも、ちょっと殺伐としたラブホテルの光景になっちゃいましたね。男のほうが脂ぎった中年っぽいのも、美しくない。

 そこで、たむこさんの送ってくれたエピソードに入っていた「雨戸」という、なんだか象徴的なアイテムをお借りして、青春っぽく切り取ってみます。

どちらともなく「しようか」とうなずいて雨戸を閉める処女と童貞

 何も書いてはいないけど、その後の暗闇は想像できるかと思います。

次週も引き続き「初体験の思い出」を募集!

 というわけで、次週も引き続き「初体験にまつわる怨霊ラブメモリー」を募集します。

「痛かった」などの感想だけよりも、具体的な場所とかアイテムとか相手の特徴とかが出てくるエピソードのほうが、業の深さ、怨霊度の高さがみなさんに伝わりやすいのではないかと思います。エピソード、こちらで編集しますので、長く書いていただいても大丈夫ですよ。

 こちらのフォームから、ご投稿お待ちしております。

 では、2015年もどうぞよろしくお付き合いのほどを。

Text/佐々木あらら

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ライタープロフィール

佐々木あらら
阿佐ヶ谷生まれ阿佐ヶ谷育ちのエロ歌人

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