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  • 2016.08.13

「心の輪郭を教えてくれる恋は芸術になる」 『溺れるナイフ』山戸結希監督×佐久間宣行トークイベント

新作『溺れるナイフ』の公開を控える映画監督の山戸結希さんがテレビ東京のプロデューサー・佐久間宣行さんを恋愛と作品作りの関係を熱く語った雑誌『Maybe!』創刊記念イベント「一流クリエイターは恋愛でつくられる!?」。二人による参加者の恋愛相談を含むトークの模様をAM編集部がお伝えします!

Maybe! 小学館 山戸結希 佐久間宣行
左:佐久間宣行さん、中央:堀越千史さん、右:山戸結希さん

夢を叶える恋がある?

山戸「恋に落ちる」とか「心を奪われる」っていう状態になっていると夢って叶わなくて。 自分の心の輪郭を知ると夢って叶うんだなって思ってて。この恋愛があったからこの芸術が生まれたなっていう恋があって。どんな恋かというと、自分の心が自分の心のままでその人が自分の心に触ると「あ、そんなところに私の心のかたちあったんだね」って心の輪郭を教えてくれるような恋があると思うんですね。そうすると必ず芸術になるので。

 映画監督の山戸結希さんがそう語ったのは8月10日に行われた雑誌『Maybe!』創刊記念イベント「一流クリエイターは恋愛でつくられる!?」の終盤でのこと。恋愛の経験と夢の成就の関係性の本質を突いた洞察に、会場全体がその日一番真剣に耳を傾けたように感じられました。
そのクライマックスに至るまでのトークの模様をAM編集部がレポートします。今恋に悩んでいるAM読者全員に必ず役立つ、会場からの恋愛相談に対する二人の回答も掲載いたしました。ぜひご一読ください!

映画『溺れるナイフ』についての山戸監督インタビューはこちらから!

登壇者プロフィール

山戸結希(映画監督)Maybe!前身の『This!』「あこがれの仕事につく100人の図鑑」企画に登場。『Maybe!』では「君がポカリを飲む頃は」と題したポカリスエットの企画を書き下ろし。2014年に『5つ数えれば君の夢』が渋谷シネマライズの監督最年少記録で公開され、『おとぎ話みたい』がテアトル新宿のレイトショー実写動員を13年ぶりに更新。2015年、日本映画プロフェッショナル大賞新人賞を受賞。11月5日に小松菜奈・菅田将暉主演の最新作『溺れるナイフ』公開予定。

佐久間宣行(テレビ東京プロデューサー)Maybe!前身の『This!』「あこがれの仕事につく100人の図鑑」企画に登場。大ヒット番組『ゴッドタン』のほか、既に4作を重ねている『ウレロ☆未確認少女』シリーズ、コントドラマ『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』、BSジャパン『文筆系トークバラエティ ご本、出しときますね』など数々の話題作を手がける。


10代の恋愛の影響は現在まで?

 司会から「創作に影響している恋愛について教えてください」と振られて話は10代のときの恋愛事情に。その影響は現在まで続いているのだとか。

佐久間:いま『ゴッドタン』って番組をずっとやってるんですけど、ディレクターはみんな結婚してるんだけど、だいたいいつもゴシップ記事とか読んで、かわいい女とやってるイケメンの悪口を30分くらい言ってから、会議を始めるんです。そうするとすごいやる気が出て(笑) 畜生、○○、もててんなぁーって言いながらやってる。その共学に対する怒りみたいなものが高校時代に育まれていて。男子校的なルサンチマンが、お笑い好きとかそういうところに、僕を向けたのかなって思いますけどね。

 一方、10代のときにはずっと恋愛してたという山戸さん。本や映画、音楽といったカルチャーよりも現在に影響を及ぼしているのが恋愛で、それを経た後では誰と出会っても余暇だと感じるようになったのだとか。

佐久間:誰と出会っても余暇だなって思うくらい、10代は恋愛してたの?

山戸:言葉にすると「どうした!?」って感じですけど、女性の真実はそうなんじゃないでしょうか。愛と夢という選択肢が立つ前に、デフォルトとして、恋愛に対して被支配的な状況に置かれているというのか。恋は、何も与えられなかった地方の女子中高生にとっての、唯一のエンターテイメントですから。今はネットが普及してるかもしれないけど、でもネットだって結局ポルノとか社会的なモテとかにたどり着いちゃうから。ただ与えられた自分の体だけでどこまでいけるか、自分のすごく限定的な身体でどこまでいけるかっていうゲームしか地方の女子にはエンタメとしてなくって、恋愛するしかないという感じだったので。やっぱりそこに対して、マジで恋愛よりも面白いものがあるって射光させたいですけどね。それは最初から芸術の形だと届かないから、きっと、恋に一番良く似た芸術みたいなものになると思うんです。映画『溺れるナイフ』が、本当にそういうふうに届いて欲しいですね。

 その『溺れるナイフ』をめぐっては山戸さんと佐久間さんの間でおかしなやり取りもあった様子。

佐久間:僕は山戸監督の『溺れるナイフ』を見たばっかりなので、それがすごいって話を今日はしたくて。みなさん、まだでしょ?見たほうがいいですよ絶対。映画評論家の宇野さんって方もツイートしてたんですけど、つまんないカットが一個もないんですよ。ほんとに素晴らしくって。菅田さんも小松さんもすごいけど、僕はジャニーズウエストの重岡君とたまに仕事をしてたんですけど、重岡君があんなにすごいと思わなかった。っていうか、女の子だったらずきゅんってきちゃうようなキスシーンとかが、すごくいいっていうのがあってですね。僕、試写見終わったあと、山戸さんに感想送ろうとしたんですけど、いろいろ、メールでは伝えられないなと思って。豪雨だったんですけど、「見終わったら雨が上がってました」っていうわけのわからないポエムみたいなの送ってて。

会場(爆笑)

佐久間:そう送っちゃったくらい、いろんなことを考える映画で、素晴らしいんですよ、ほんとに。

山戸:忘れがたい思い出ですね、「あ、佐久間さんからメール来てる」と思ったら、「見終わったら豪雨が快晴でした」って内容で (笑) 映画に触れてくれないのかな?って思いました(笑)今まで、乃木坂46さんなど女子のアイドルを撮らせていただいてきたのですが、ペルソナとその個人の身体性をめぐる問いがずっとあって、もし、男子のアイドルを撮るとしたら、こういう方法論に変換して適応できるのになって思っていました。その実験の記念すべき第一弾として、純朴な重岡君にぶち込んでしまいましたね。

 新作の『溺れるナイフ』の話をきっかけに、トークは実体験と作品づくりの関係についても及ぶことに。

佐久間:監督は作風に、実体験はでるんですか?溺れるナイフは原作があるけど、今まで撮ったものとか。

山戸フィクションの中でしか真実は物語れないのだと思いますね。現実の言葉で、今個々で、「今三年間付き合ってる彼氏がいて」って言ったときに、言葉にしちゃうと何かが決定的にすれ違ってしまう。世界でたった一人の人間を見つめながら、この宇宙でたった一回の恋だと思って生きた時間は、フィクションの中でだけきらめくことができるというのでしょうか。

佐久間:『おとぎ話みたい』みたいな映画って、どうやって着想するんですか?

山戸:今回Maybe!で恋愛っていうテーマをいただいて考えたことなのですが、今まで自分が恋愛映画だけを撮っているっていう自覚が全くなかったですね。ただ事実として、恋愛映画だけを撮って来ているんですけど、「ラブを撮ろう」と思って撮ってるわけじゃなくて。若い10代の肉体の実存にかかわる問題として、何が決定的に響いてくるのかを考えたときに、女の子の10代の人生を揺るがすものが恋でしかないっていうのがあったんでしょうね。結果、若い女の子を撮ろうとしたときに決定的にいつも恋が絡んできていたっていう感じですね。『おとぎ話みたい』もそうだったのかな。あらすじにしちゃうと「若い女の子が先生に恋をする話」っていうめちゃくちゃ定型的で、あちこちにあるような愚かな恋愛とか憧れでしかないんですけど、ただその中にある内的な一回性の真実として、10代の恋愛を撮りたいっていうのがあったんです。


どういう恋をすればいいかわからない……
Maybe!読者の恋愛相談会!

Maybe! 小学館 山戸結希 佐久間宣行
トークイベントの様子

 当日はイベント開始前に質問用紙が配られ、会場からの二人への質問が集められました。佐久間さん代読のもと(佐久間さんの夢はラジオパーソナリティになることだったそうです!)、お二方が経験に基づく説得的なアドバイスで質問をさばいていきました。当日の雰囲気を伝えるべく、いくつかの質問を選んで、対談形式で掲載します!

「現在29歳です。高校生の頃から一人の人とお付き合いしています。恋愛は作品にも影響すると思いますが経験豊富な方と私のように一人の人としかお付き合いしたことない人とでは作品からそんな違いを感じますか?ないものねだりかもしれませんが、たくさんの方といろんな恋愛をされてきた方と作品が魅力的にみえてきてしまったりします」

山戸:この方は、今の彼氏と真剣に付き合いつつ、いろんな恋をした方がいいと思います。はい、じゃあ次!

会場(爆笑)

「齢22年、彼氏ができたことがありません。告白されてもタイプじゃないので断り、告白してもタイプじゃないからと断られ、恋愛を成就させる秘訣はなんでしょうか? お二人は自分と相手の需要すんなりマッチすることが多いですか? 」

佐久間:でも告白をされてるわけだからね。とりあえず付き合うってことができないってことですよね。

山戸:自分と相手の需要がすんなりマッチすること、か…。

佐久間:こんなことってめったになくないですか? 需要がマッチすることなんて。

山戸:やっぱり、どっちかの欲望が駆動してから、反射するのですかね。

佐久間:どうですか? 山戸さん、一刀両断してください。

山戸:この方おそらく、魅力的な方だと思うので、でも成就されないのは、まず告白の仕方に問題があるのではないでしょうか。「こんなこと言われたら絶対に断れないよ」「好きになっちゃうよ」という告白をしたらどうですか。クリエイションに恋愛が必要なのではなく、恋愛自体がクリエイションなので。もしも異性からこんな愛の告白をされたら、こんな出会い方をしちゃったら、好きになるしかないっていう岐路はあるじゃなですか。それはこの世に現然と存在しているわけですよね。ご自分が、全然好きじゃない人からどう告白されたら、「あ、でもこの人と付き合ったら夢の世界が広がってるかもしれない…」と思えるのか。そんな、面白い告白空間を創造する方向でぜひ。相手がYESって言うしかない、その道を照らし出すような告白をしてみたらどうでしょうか。

恋愛とどう付き合うべき?
『Maybe!』読者への人生指南会!

「恋愛すると何か自分に変化は起きますか? 今までそのような経験はありますか? 」

山戸:どうですか? 女の子に囲まれて立教に落ちた佐久間さんですが、なにか変化はありましたか?

佐久間:僕の作るものでいうと、変わらないですね。彼女ができると、おもしろくなくなる芸人とかいるんですよ。彼女にそんな下ネタいうのやめてって言われて。別れたほうが面白くなる芸人とか絶対いて。実は僕もそうなんですよ。結婚して、他の女性がなんとも思わなくなって、モテようと思わなくなってから、面白い番組を作るようになりました。色気がなくなったというか。奥さんは僕の番組を見ないので、誰かに好かれようと思って作らなくていいから、BPOに怒られないレベルまで攻めて大丈夫だなとか。もし彼女が僕の作るような番組が苦手な人だったら、ちょっと気にしたと思うので。

山戸:その感じすごくわかりますね。いま映画を見てくれてる方は、女性のお客さんが多くて、『溺れるナイフ』も女性向けの作品なんですけど。最初のインディーズの映画の世界には男性の監督が多い中、男性にはどう見られるのかという意識を捨てないと強い作品を作れないなと思いました。

「今の仕事をしていて、大学時代にやっておいたほうがいいってことはありますか? 恋愛も必要ですか?」 

佐久間:クリエーターを目指してるんでしょうね。

山戸:きっとね、大学生だったら、恋愛より夢を目指して具体的に努力したほうが早い気がしますよ。

佐久間:そうですよね。恋愛が必要だから恋愛をするのではなく。大学時代に夢をかなえるため死ぬほど努力したほうがいいと思います。そっちのほうが早いですよ絶対。

山戸:テレビプロデューサーになっている自分に、映画監督になっている自分に恋をするみたいな感じで。そういう気持ちで頑張っていけば、その途中で自然と、いま「恋愛が必要だから」って思ってする恋愛よりも、良い恋愛ができるんじゃないですかね。一挙両得で、進まれてください。

「夢をかなえるために必要なものは何だと思いますか?」

佐久間:難しいですよね。

山戸:佐久間さん、夢は叶っていますか?

佐久間:うーん。夢が叶ってるかって言われたら難しいですね。その都度目標はできているけど、作れば作るほど、今ある自分は自分が憧れていた番組への道に続いてるような気もするけど、遠ざかってる気もするというか…足りないものがどんどん見えてくると思うと、夢がかなってると思ったことはないですね。

山戸:でもずーっと夢を見続けて、どんどん大きいほうに行くって感じですものね。どんどん遠くに行くというか。

佐久間:そう、具体化するほど。近づいて遠ざかっての繰り返し。

山戸:恋愛って、「恋に落ちる」とか、「心を奪われる」っていうじゃないですか、でもきっと、その状態では夢は叶わなくて。自分の心の輪郭を知ると、きっと夢は叶います。芸術は心の発露だから。夢を叶える恋っていうのは、心奪われる恋ではない。そうではなくて、自分の心が自分の心のままで、好きな人が自分の心に触った時、「あ、そんなところに私の心の形あったんだね」って、心の形の輪郭を教えてくれるような恋。そういう恋があるんだと思いますね。そういう恋は必ず芸術に姿を変えてゆくと思うので、心を奪われずに、自分の心のままで相手を見つめるということで、頑張ってほしいですね。

Maybe! 小学館 山戸結希 佐久間宣行
トークイベントの最後に行われた『君がポカリを飲む頃は』(文・山戸結希)の朗読にて。堀越千史さん。

Maybe! 小学館 山戸結希 佐久間宣行
サイン会の様子。当日分として用意した『Maybe!』が売り切れとなったほど、みんなサインを欲しがった。

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