卵子凍結について

卵子凍結保存の専門家である香川則子先生
編集部

卵子凍結についてもうかがいたいです。先生のもとへは何歳くらいの女性がいらっしゃいますか?

香川先生

現在、弊社のナイトセミナーの参加者は対象年齢が38歳以下ということもあり、平均37歳くらいですね。
みなさん39歳くらいまでに採卵を希望されます。というのも、ガイドラインでは40歳以上の採卵を推奨していません。ただ、医学的な理由ではないので、既婚者は41歳でも42歳でも採卵はしています。

編集部

40歳になる前にと駆け込みでいらっしゃるんですね。

香川先生

けれど、すぐに妊活をスタートできるわけじゃありません。必要な予防接種には半年ほどかかります。
だからこそ、妊娠予定がなくとも時間があるときに打っておいてほしいですね。

編集部

予防接種以外にもやっておいた方がいいことはありますか。

香川先生

「葉酸」というビタミンのサプリも妊活前から未婚でも彼氏が居なくても飲み始めておいてください。妊娠初期(妊娠に自覚がない時期の胎児の健康に不可欠)には必要な摂取量を満たしていないと不安です。

妊娠初期の葉酸の不足と二分脊椎リスクの関連が報告されています。どこのメーカーでも良いので、錠剤からグミなど自分が楽しく習慣づけられそうなものを探してみてください。通販でもドラッグストアでもコンビニでも入手できます。

編集部

20代もいらっしゃるんですか。

香川先生

10代でも健康不安(多嚢胞性卵巣症候群、卵巣機能不全、卵巣嚢腫、揮発月経など)のある人、トランスジェンダー男性(Female To Male)、子宮頸がんやその他のがん治療を予定している患者さんなどはいらっしゃいます。

編集部

先生の著作を拝読して、卵子凍結には費用だけでなく、時間がかかることに驚きました。

香川先生

そうですね。「高額」「怖い」「簡単に(すぐ)できそう」というイメージを持ちセミナーにいらっしゃる方は多いです。

編集部

先生の説明を聞かれてイメージとのギャップを感じそうですね。

香川先生

けれど、セミナー後には「高いけど安全と効率のために妥当な費用」「麻酔で痛みや不安が軽減されるなら恐怖は許容範囲」と安心される方もいますし、反対に「受診毎の待ち時間が長い、通院回数が多い」「薬を使っても、生理周期や卵巣機能次第で卵子が育たないことや、採れないことを知らなかった」と驚かれる方もいます。
このようなギャップは、採卵までに提携先の施設と一緒に、丁寧に埋めるようにしています。

編集部

凍結した卵子を実際に使用する方は何割くらいなのでしょうか。

香川先生

卵子凍結は自然妊娠を生殖高年でも安心して臨むための「精神的な保険」として利用される方もいます。
また、「2人目不妊」(第二子の時に生殖高年でなかなか妊娠できない)のために凍結される方も。

だから実際に凍結卵子を使用された方は1割未満と少数です。

編集部

卵子は何個くらい採卵できるんでしょう?

香川先生

初回で平均5~6個です。けれど、1回採卵して2個でも、4個、6個保存した人と将来の出生率に差がない、という統計データはあります。

編集部

多ければいいのかと思ってました。

香川先生

採取のタイミングは34歳以下が効率的であるという結果もあり、採取年齢が上がるほどどれだけ多く採卵しても、出産に至らない人もいます。やはり卵子の数より年齢を気にすべきだと思います。

編集部

高齢の方が出産した例はありますか?

香川先生

うちのバンクを利用して43歳で出産された女性もいます。43歳といえば、1回の体外受精治療あたり出産率は5%です。けれど、彼女は39歳のときに採卵した凍結卵子を使用しました。
39歳の卵子だと1個あたりの出産の確率は10%程度。「10% × 採卵できた5個の卵子」で、出産まで至る確率は50%です。2分の1まで確率を高めたからこそ、43歳での出産が可能でした。

編集部

やっぱり出産には卵子の若さが重要なんですね。