彼を“どう触りたいか”イメージできる?「色気」で変わる社会/演出家・鴻上尚史さん(後編)

「あの人は色気がある(ない)よね」?とは言うけれど、「色気」とは一体どういうもの?という疑問からスタートした本特集。

後編は「色気」を意識することで育まれる力、それが社会にどう影響するかについて、『あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント』などの著書もある、演出家の鴻上尚史さんにお話を伺いました。

世の中にどんな触り方があるかを観察する

『あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント』著者の鴻上尚史さん画像 鴻上尚史さん

―― 前編では、「色気」を生み出すための訓練として、具体的にイメージすることが大切だとおっしゃっていました。その上で、どういう点に注意したらいいでしょうか。

やっぱりちゃんとストーリーの中にベッドシーンがある映画、舞台などの作品を見て、自分の中に取り込むことかな。こんな抱かれ方素敵だなとか、こういう触り方をしてみたいなという視点で見ることが大切です。

――なるほど。たしかに相手にしてもらうことが先行していて、どう触りたいかが欠如してる気がしました。

まだまだ一般的に女性は「見られる性」で、男性は「見る性」だからでしょう。男性のうまい俳優たちは、変な歩き方してる人を見て真似たり、飲みの席でものすごく泥酔している人を真似するのが上手なんですが、それは「見る」ことが染み付いてるからです。
ところが「見られる性」である女性たちは、どう見られてるかを意識するから、メイクやファッションは吸収するんだけど、人のさまざまな動き方を「見る」という立場になかなか立てない。
恋愛的なことでいえば、受身で待つことが多いので、自分がどうしたいかという意識を閉じてしまっているのかもしれない。世の中にはどんな触り方があるかを観察するといいと思いますね。

―― どんな触り方があるか、という視点で見てなかったです…!

まあ、じろじろ見て気があると思われたら困るので、映画とか、テレビで観察するのがいいでしょう。でも地上波も、唇だけ合わせました、以上! みたいなお人形さんのキスばかりで、嘘っぽくなってしまいましたよね(笑)。
最近は映画監督もオタク系のモテない男たちが多いので、日活の大ベテラン大御所がある映画を「この監督は本当にモテないんだろうな。なんて貧しいベッドシーンだ」と評していて、妙に納得してしまいました(笑)。男は男で怖いんです。どういう経験をしてきたか出ちゃうから。

―― なるほど、それはそれで面白いですね(笑)。昔の映画とかも参考になりそうです!

あと、女性作家が書いた小説もとても参考になると思いますよ。「そうなの、そうなの、そういうことしてほしかった」みたいな、自分が言葉にできなかったことをちゃんと表現してくれてるという発見があると思います。