今回は、小説家・コラムニストの中村うさぎさんに、ご自身の体験を踏まえて、「依存と甘え」についてのお話を伺いました。
最終回は、男女それぞれお母さんを欲しがっているというお話についてお聞きしました。恋愛から結婚への流れで悩んでいる人はぜひ読んでみてください。
第1回「甘え下手な優等生キャラは得しないが男に縁がない訳ではない」、第2回「甘え下手な優等生キャラは得しないが男に縁がない訳ではない」、第3回相手に執着してしまうのは自己愛が強すぎるからも合わせてどうぞ!
男も女も母子のべったり依存からはじまる
―男性の甘えと女性の甘えに違いはあると思いますか?
中村うさぎさん(以下敬称略):私は、男の方が甘えると思うんだよね。
どんどん図々しくなるし、勝手にお母さんにされていっちゃう。
じゃあ、男がお父さんになるのかというと、ならないから。
お父さんは実のお父さんだけだし…っていう風潮あるよね(笑)。
一部のファザコンの人は別にして、お父さんと娘の間にそこまでの依存関係がないからだろうね。
母子っていうのは、男でも女でも生まれた時はべったりの依存関係から始まるから。
そこから自分の自我が芽生えて、だんだん親離れをして、自分というものを確立していくんですよ。
ただ、こと恋愛になるとバカになって幼児がえりしやすく、男性は女に甘えますよね。
みんなお母さんのことはぞんざいに扱うじゃないですか「いいじゃん、俺のこと分かってるでしょ」ってさ。
だからお母さんになった女の扱いもぞんざい。
実際は、俺のことなんて誰も分かってないんだけどね。
それが甘えであり依存だと思うんだけど、日本はまだまだ家族主義だから「お母さんとボク」という関係になりやすい。
男女での経済的な依存は
ほぼ親子関係に近い
―お母さんとして、扱われてしまうというのは身に覚えがある人が多いと思います。
女性の方はどうなんでしょう?
中村:女の人も、男の人のことをお母さんみたいにしちゃっているところがあると思うんだよね。
たとえば経済的な依存だってそうじゃない?
働かないで食わしてもらおうとか、それって親子関係ですよ。
お互いに相手の子供になっちゃうんだよね。
でもそれが悪いとは私は思わないの。
相手が嫌がっていたら、それはヒビが入るけど、男の人が女の人を母親扱いするにしても、それがうれしい女の人もいるわけじゃない?
甘えられても「もう、子供なんだからー」とか言いながら、そういうところもかわいいって思える女の人だったら上手くやっていけるんだから。
依存が悪いんじゃなくて、その依存をいかに共有できるかってところが、恋愛における依存の課題なんだと思うんですよ。
時間とともに関係性は変わっていくので、ある時相手の依存の共有が外れていたりする。
常に甘えすぎてしまうと、その移り変わりが見えなくなるから、距離感を見計らうことは必要ですね。
でも、女だって男だって、子供になって、100%分かってくれて、100%受け入れてくれて、それで自分は何もしなくてもよければ、本当に楽だよね。
具体的にいえば、ごはんを出してくれるとか、養ってくれるとか。
そういう風に面倒をみてくれる人がいたらいいなあ、という気持ちは誰しもあると思うのね。
うちも、夫との間には、お互いの母親役をするところがあるなと思うわけですよ。
うちの夫はゲイなので、すごくお母さんぽいところがあるの。でもゲイの人って、マツコ・デラックスとかもそうだけど、肝っ玉母さんみたいな「ちょっと厳しいことも言うけど、あんたのことを見守っているわよ」というところがあるよね。