忙しいカレシが放った、トラウマ級のひと言
この「忙しい」という感覚は、案外バカにならないものだと思います。ものすごく当たり前のことを何の論拠もなく言いますが、現代人って忙しいじゃないですか。そして、これが現代の“甘えづらさ”の遠因になっているのではないか。
ひとつ、忘れられないエピソードがあります。
3年ほど前に失恋ホストを利用してくれたトモミさん(仮名)の失恋体験です。
彼女は当時28歳。大学時代の同級生で、交際2年目というカレシがいました。トモミさんは会社で小さなグループのリーダーになり、通常の業務に加え、人間関係のケアなどもすることになってしまったため、考えることが多すぎて頭の中がぐちゃぐちゃになっていました。そしてある日、カレシとお泊まりした際、ごちゃ混ぜになった愚痴や悩みを「助けて!」と言わんばかりに吐き出したトモミさん。そこでカレシが言い放ったひと言が、トラウマ級に強烈でした。
「あのさ、俺も忙しいから、要約してからしゃべってくんない?」
……チーン。南無阿弥陀仏。彼女の心は凍てつきました。パルドン? 我々の脳みそもフリーズしました。
ちょっと待ってくださいよ! こっちは混乱して要約できないから話を聞いてもらいたいんでしょ?
てか、そういうのって話しながらまとまっていくもんじゃないの? 最初から考えがクリアだったら、そもそもお前に話してないっつーの!!!
カレシの会社は外資系コンサル。何をしてるかイマイチわかりませんが、忙しいのは確かだと思います。でも、この返しはないですよね。トモミさんが受けたショックは計り知れません。
そして彼女の気持ちは灰のように真っ白になってジ・エンド。別れを切り出した側にも関わらず、立ち直るまで数カ月もかかったそうです。
現代人を苦しめる「効率ハラスメント」
根拠もなく言い切りますが、携帯電話とインターネットのせいで、現代人は飛躍的に忙しくなりました。
常時接続の人間関係、SNSでの絶え間ないコミュニケーション、次々と更新されていくネットのコンテンツ、分刻みで調整できるようになったスケジュール管理……。
などなど、できることが増えすぎて、みんなマネージャーつきの芸能人ばりにせわしない日々を送っています。
携帯電話とインターネットがむやみに行動の選択肢や可能性を広げた結果、何が起きたか。ご存知の通り、有限である「時間」の価値が高騰してしまいました。
例えば一日をゴロゴロして過ごしてしまったとき、「ガッテム! 何て時間をムダにしてしまったんだ!」と後悔したことはないでしょうか。
あれはつまり、本来いろんなことができたはずの一日を寝て過ごしてしまった結果、手に入るはずだった様々な可能性をみすみすムダにしてしまった、という後悔なのだと思います。
それで現代人は、「効率! 効率!」「コスパ! コスパ!」とお題目のように唱えるようになり、時間の有効活用やムダの排除ばかり考えるようになってしまいました。何ごともサクサク進んでいかないとストレスを感じ、「今=○○の時間」というように“タグ付け”されていない時間はすべてムダ。現代人は壮大な「効率ハラスメント」にさいなまれており、その結果みんな“時間貧乏性”になっているのが現状……のような気がします。
要するに何が言いたいのかというと、
「みんな忙しいから他人の甘えを受け入れる余裕がなくなっているし、相手も忙しいはずだと思っちゃうから甘えづらくなっているのではないか」
ということです。最初からそう言えって感じですね!