小さな木箱。スライド式の蓋を開けると、中には金属製の玉がふたつ。
玉を転がすとチリーン、チリーンとまるで風鈴のような音が玉から聞こえてきます。
これは「りんの玉」と呼ばれる性具です。このふたつの玉を女性器に入れて房事を行うと、内部で玉が揺れるその振動で女性がオルガズムに達しやすくなるそう。古くは中国で「勉鈴(べんりん)」という名で知られており、明の時代の艶情文学『杏花天(きょうかてん)』や『金瓶梅(きんぺいばい)』にも勉鈴が登場します。
玉の中には何が入っているのかというと、ふたつの玉のうちひとつには螺旋状の短い針金、もうひとつには少量の水銀がはいっているようです。
江戸期に出版された性典物(性のハウツー本)である『艶道日夜女宝記(びどうにちやじょほうき)』には様々な性具が紹介されているのですが、この中に「りんの玉」の使用方法が載っています。
右のように、陰部に玉をツルっと挿入し交合を行います。交合を終えると女性は性器が下向きになるような態勢になり、図のように尻をポンポンと叩いてもらうとこれまたツルっと出てくるようです。りんの玉を挿入したまま男根を挿入することもあるのですから、うっかり性器から玉が出てこなくなったらどうするのでしょうか。
わたしが中学生のときに愛読していたティーン向けの雑誌には「性のお悩み相談室」たるコーナーがあり、「オナニーをしていてスーパーボールを股に入れたら出てこなくなりました。どうしたらいいですか。」という悩みが投稿されていました。その回答は「すぐに腐敗するものではないのですが、病院に行きましょう」。江戸期にも「りんの玉が出てこない!」という焦りを感じた女性はいたのかもしれません。
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