私の奥まで来て!もう毎日来場して!「だいしゅきホールド」は古くからある/春画―ル

絶頂と不満

春画

なんで恋愛をすると、誰もがチンパンジーレベルの思考回路になってしまうのだろうか。
(いや!チンパンジーだって愛情や知能もあるので比喩だよ!)

理性を失い、本能的になる瞬間。頭で言語化して考えるよりも先に身体が衝動的になってしまうことは誰にでも一度はあるだろう。時代を問わず性愛に関する表現を見ていると、「喜び」や「愛おしさ」を感じているときのベット上の衝動的な行動を挙げるときりがない。

今回は人間が好きな相手とセックスをするときの衝動的な行動の2種類と、「セックスにおけるパートナーとのすれ違い」を260年前の書物から紹介しよう。

もういい加減こんなすれ違い終わりにしたいし、なかなか胸にグサグサ来ますよ。

燃えあがるとやっちゃう本能的な「だいしゅきホールド」

春画 奥村政信《閨の雛形(ねやのひながた)》

『だいしゅきホールド』とはGoogle先生によると、

正面から相手に抱きつき自分の四肢を相手の身体に絡めつけること

とある。舌であろうと指であろうと、自分の極限までプライベートである各所粘膜に好きな相手が絡みついて来た瞬間に「もうわたしの奥の奥まで来て!来て!もう毎日来場して!年間フリーパスあげちゃう!」ってくらいの気持ちで抱きしめちゃいますよね? 脳内がエンターテインメントで、しかもパレードまではじまる。

これがわたしの「だいしゅきホールド」となった脳内です。

「だいしゅきホールド」中に「今何時だろ?」とか「やべ、明日のお弁当の米炊いてないや、このままセックス終わって寝てたら明日米無しだわ」とか考えないでしょう。「今この瞬間」に集中できるほど目の前の愛を感じられることは、まるで瞑想をしている時間のようだ。自分にも周囲にも優しくなれる。

春画 杉村治兵衛《絵本恋の丸はだか(えほんこいのまるはだか)》

この「だいしゅきホールド」の四肢で相手に絡みつく体位は、今からおよそ340年前の菱川師宣の《恋のむつごと四十八手(1679年)》という本で『四手(よつで)』と名付けられ、「この手に勝るは無し」と説明されている。つまり「四手よりめっちゃ良い体位は無い!」ということだ(菱川さんの主観)。

そして、現時点で発見されている“最古の男女交合図”である鎌倉時代の《小柴垣草子(こしばがきぞうし)》にも、だいしゅきホールドが描かれている。

春画 《小柴垣草子(こしばがきぞうし)》江戸後期模写

この絵巻の内容は、皇女の済子(なりこ)が警護についたイケメン平致光(たいらのむねみつ)を誘惑してこっそり肉体関係をもつ話のようだ。済子ちゃん積極的で好きよ…..。

春画 《袋法師絵詞(ふくろほうしえことば)》江戸中期模写

ちなみに鎌倉時代に描かれた上図の《袋法師絵詞(ふくろほうしえことば)》という話にも、だいしゅきホールドらしき体位が描かれている。