毎夜くる好きな人が実は死んでいた…愛しすぎて止まらない春画作品

春画 歌川豊国《逢夜雁之声(おうよがりのこえ)》

「好きで好きでたまらなく好きで、会うたび声が詰まり喉が渇き、思い出すと涙がにじんで恋煩いのおくすりを処方してほしい――そんな自分が自分でなくなるほど「好き好き大好き!」になってしまって、自分自身でも予測してなかったことをやってしまうことがあります。

その行為が世間的にどう受け入れられるのか、などという客観視を忘れて相手との世界に入り込んでしまうと、数年後に「わたし、すげえ痛かったな」と自分の黒歴史として記憶に刻まれることもあるでしょう。

今回は相手への愛が止まらなかった末の風変りな結末の春画をふたつご用意しました。
こんなお話の春画もあるんだ! と楽しんでいただけると幸いです。

一生叶わないと思っていた恋。あなたは既に冷たくなっていた

春画 歌川豊国《逢夜雁之声(おうよがりのこえ)》

愛していたが、叶わぬ恋だとあきらめていた。あの美しい身体に触れることは、一生できないだろうと思っていた。これは夢なのだろうか、あなたと交われる日が来るなんて。しかし、君はすでに冷たく、自分に微笑みかけてくれることは一生なかった――。

彼は湯灌(ゆかん。亡骸を入浴させ、身体を洗うこと)の仕事をしている。この女性に片想いをしていて、その想いが叶うことはないだろうとあきらめていた。絵に書かれている彼のことばを現代的に読んで見ると、

「俺が彼女に惚れていたが、叶わぬ恋だとあきらめていた。しかし昨日死んだと聞いて、湯灌のときに交わりたいと楽しみにしていた。こうなっては、あなたが仏でも幽霊でも我慢ができない。ねえ、聞いておくれ。君のことが昔から好きだったんだよ。ああ、冷たいぼぼ(性器)だ。奥まで挿入したい。なんだか体中がべとべとしるが君であることに違いはない。しかし他に変わったとこなど無い。でも、叶わぬと思っていた願いがこんなところで叶うなんて……」

彼は亡くなった彼女の身体を洗うことになったのだが、その想いを遂げたいと思い、彼女の亡骸を抱いてしまうのです。彼の仲間が様子を見に来ますが、返事をしない彼を不審に思い、部屋を覗き込もうとしています。

彼女は細い手足をだらりと垂らし、目を閉じています。しかし彼にとってはずっと前から好きだった彼女に違いはないのです。