他に気持ちがあるのかわかるおまじない

春画 西川祐信《欠題上方艶本(けつだいかみがたえほん)》

意中の女性の気持ちがどこにあるかを確かめるなんて、実にこじらせているおまじないだが、その方法は下記のとおりである。

東の方角へ行く馬の蹄が踏んでいる土を取って、女性の衣類の中に密かに隠し入れておくべし。するとその女性の心の内がことばに現れるので、もし女性の気持ちが他の人にあるときはそのことを問わなくても知ることができる。これは実に秘法である。

みんなから愛されたいときはこのおまじない

春画 渓斎英泉《閨中紀聞/枕文庫(けいちゅうきぶんまくらぶんこ)》

たくさんのひとに愛されるためには、「男女愛敬の守」というお守りが効くという。

その方法とは、上の文献の四角の囲みに書かれている呪文を清紙へ記し、21日間誰にも見られないように1日に4枚ずつ書き、東西南北の神へ密かに納めて願う。21日目に書いた呪文を綿でできたお守りに入れて、肌身離さず持ち歩けば人々に愛される。

みんなに愛さたいという願いは、古来からずっとあるようですね。わたしは多くのひとに愛されるよりも互いに高みを目指して励まし合い、知と愛情を分け合えるごくわずかな友人がいたら幸せなのだが、それじゃあだめですかね。

どんなに文明が発達しても、誰しも承認欲求を満たしたいという思考の根底は変化していないように思います。むしろ膨大な情報が溢れ、なにが正解かわからなくなりそうな現代よりも、ねずみのきんたまを陰干ししたり馬の踏んだ土を採取している時間に没頭できる江戸時代のほうがある意味幸せなのかもしれません。

あ、でも自分の願いを叶えるためにねずみさんを殺生してはいけませんよ。気になる人にはただ一言、「あなたのことが気になる」と言えば良いんです。

Text/春画―ル