3.唐皮でできた避妊具の使用

春画 渓斎英泉《閨中女悦笑道具(けいちゅうにょえつわらいどうぐ)》

見た目はコンドームに似ているこの避妊具は、図中の書き込みによると、「革形茎袋(かわがたきゃうたい)」や蛮名で「リユルサツク」と呼ばれ、虎の皮でできたこれを男性器に装着することで、淫汁(いんじゅう)を女性器の中へ漏らさないようにして懐胎を防げる代物らしい。

しかし当時虎はとても希少な動物だったため、その皮を使用した品は一般庶民には手が出せないほど高価なものだっただろう。また、この避妊具をしようしている絵や勧めている文献に出会ったことがないため、実際にどれだけ普及していたのかは謎である。

以前、ビロードでできた吾妻形(現代のオナホ―ル)についての説明を読んだことがあるのだが、生地の性質上汚れてシミになりやすいため、中で射精しないようにと注意があった。虎の皮でできた避妊具も同様に、射精して水洗いして何回も利用するには極めて不衛生であり、使用する男女ともに革の触り心地に不快感がありそうだ。

現代のコンドームはラテックスアレルギーの方でも使用できるものや、触感はもちろん潤滑ゼリーの量が異なる様々な種類がある。おせっかいなわたしは再び時空を超えて、そっと現代のコンドームを枕元に置いて歴史を変えたいくらいにはその茎袋が有効なのか心配しているぞ。

4.アダルトグッズで亀頭部分を覆う、または締め付ける

春画 北尾重政《艶本色見種(えほんいろみぐさ)》

この方法はクジラのべっこうや水牛の角でできた性具を用いて交合する避妊法である。

性具の形状は2種類あり、

1.リング状がカリ部分を締め付けて、精液が鈴口から出ないようにする方法
2.亀頭のような形状が亀頭部分を性具で覆い、女性器に精液が付着するのを防ぐ方法

上の春画《艶本色見種(えほんいろみぐさ)》では見えにくいのだが、カリ部分に「りんの輪」をつけようとしているところだ。後家の彼女はりんの輪が避妊に有効というのを聞き、さっそく試そうとしている。そして、これで孕まないなら何個もつけたいと男性に話している。

春画 月岡雪鼎《艶道日夜女宝記(びどうにちやにょほうき)》

「りんの輪」は上の図の真ん中に描かれており、男性器に装着している黒いりんの輪はクジラのべっこう、まだら模様は水牛の角である。ちなみに左の、イボのついた輪は「なまこの輪」と呼ばれ、乾燥したなまこを口の中でふやかしカリに装着すると女性は挿入されたときにとても気持ちが良いらしい。

右の性具は「かぶと形」と呼ばれ、こちらもクジラのべっこうや水牛の角、べっこうなどでできており、これを亀頭に装着すれば膣に精液が漏れるのを防止できる代物である。鈴口自体は性具で覆われているので精液は漏れないかもしれないが、性病は防げませんし、覆うことができているのは亀頭部分のみってのが怪しい。

5.女性器にお灸を据える

春画 渓斎英泉《閨中紀聞/枕文庫》

渓斎英泉の《閨中紀文/枕文庫》に「懐胎せぬ灸点の法」がある。書物によると、不本意な妊娠による堕胎で命を失う者が多いのでしっかり避妊をするようにと但し書きが添えられ、女性器の割れ目の外れより一寸上に3点ずつ、7日間据えることにより一生懐胎しないと書いてある。また、この説明の最後に「一生涯妊娠しないことは女性の本意ではないので性欲を慎みすぎてこのお灸を行ってはいけない」ということばで締めくくられている。

わたしの大好きな渓斎英泉さんの《閨中紀聞/枕文庫》の末尾には、引用文献が記載されているのだが、「英泉さん….それは参考にならず、2019年の今では避妊方法とは考えられません(涙目)」とそっと伝えたくなる内容である。

6.江戸時代にも経口避妊薬は存在した「朔日丸」を飲む

春画 吉田半兵衛《好色訓蒙図彙(こうしょくきんもうずい)》

「江戸時代は堕胎専門の婦人医「仲條」が存在していた。仲條は「月水早流し(げっすいはやながし)」と呼ばれる、堕胎を促す薬の販売も行っていたようだ。しかし、子供を望まない女性は避妊をしたい。そういう女性たちのために「朔日丸(ついたちがん)」という避妊薬が存在した。毎月1日に飲むと妊娠しないという、絶対嘘じゃんと言いたくなる薬である。何が入っているのだろうか。

この朔薬丸、渡辺信一郎氏の『江戸の女たちの月華考』によると、櫛屋さんで委託販売をしていたそう。仲條医のところへ行き薬を買うと町中のうわさになるし、買うにもハードルが上がりますよね。しかし櫛屋ならば、櫛を買いに来たお客さんにしか見えない。中條医は商売上手ですね。

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