「キュン」がつまった春画を見よう。歌川国芳が描く、オラにゃん男子/春画―ル

春画 歌川国芳《花結色陰吉(はなむすびいろのほどよし)》

「俺が拭いてやろうか?なんなら舐めてやろうか」
「あんたも物好きだねえ」

なんてトイレについてきてオラにゃんしているカレと、そんなシチュエーションも嫌いじゃない彼女のクスリと笑ってしまう春画からはじまる「令和奇聞」。今回はカップルたちの日常を覗いていきましょう。

交わりだけではなく、日常のキュンとする場面も

春画 北尾重政《閨花鳥襷(けいかとりだすき)》

「春画」と聞いてすぐに連想するのって挿入シーンや、着物や髪を乱しているところですよね。しかし春画とは「性のいとなみ」であり、それは交わる行為の前後での何気ないカップルの日常でもあります。

春画は現代のコンテンツのように「男性に支持されやすいコンテンツ」「女性に支持されやすいコンテンツ」などの性別による分類を感じにくいと思っていて、年齢や性別問わず、誰が見ても楽しめる。しかし、春画のなかには乱暴しているシーンもたまにありますが、よく見るとそれらは行為への好奇心を煽るものではなく、「このような行為はしてはいけない」というメッセージ性が隠れています。つまり、暴力性による性の興奮を促す描写は極めて少ないのです。

たとえば、娘を誘拐しようとする盗賊が落語調で話していると、どこか隙を感じる。その様が見る側に笑いを誘うので、悪人に圧倒的な悪と不快感を抱かなかったりする。その理由として、春画が「わらい絵」とも呼ばれるように「性はよろこびであり、当たり前の欲求」という考えあるからだろう。

今回ご紹介するカップルたちの会話やシーンは当時の読者たちに向けたものであり、これらの絵になぜ需要があったのか、という視点を持ちつつ見ると楽しいと思う。

読者のみなさんは歴史に詳しくある必要はありません。セックスだけがカップルの濃密な時間ではなく、そこに至るまでの細やかなコミュニケーションや何気ない場面でのパートナーへの愛情表現に愛おしさを感じるでしょう。

どうぞ、みなさまの人生で得てきた感情や経験を通して覧ください。

湯上りの彼女を待てずに、後ろから唇を奪う

春画 歌川国芳《花結色陰吉(はなむすびいろのほどよし)》

彼女「誰かと思ってほんとうにびっくりしたよ、にくらしい」

彼「これしきのことでそう驚くこともないだろう。今洗いたての生貝をふるまってくれねえか。最初は口からいただこう、やわらかそうだな」

湯上りの彼女の爪を切っている仕草にむらむらしたのだろうか。彼は待っていられず後ろから唇を奪い、彼女の着物に手を入れる。

好きな人が理性を抑えられずに自分のことを求めてくることに嬉しさを感じる読者様もいるでしょう。

彼女の美しい首からあごにかけての延長には、ドキリとしてしまうほどに切れ長目のオラにゃん男子。彼女の表情はわかりませんが、しっかりと唇は重なっています。

最初に紹介したトイレいちゃいちゃ春画然り、歌川国芳先生はオラにゃん男子を描かせると天才すぎる