秘宝館のいまの女性客

 さて問題の熱海秘宝館だが、ここは数ある秘宝館のなかでもメンテナンスの実施や新たなアトラクションの導入が最も活発である。
21世紀に入ってからも「新説浦島太郎」「熱海の花火」「吉原芸者」「シーサイドマンション秘宝館」「あなた好みのパートナー」といった展示が追加されている。
このあたりが、秘宝館として最後まで生き残った秘訣なのかもしれない。

 やはり現在も、女性客は意外と多い。実際、私も現地で感じた。
私が熱海秘宝館を訪れたのは大学の卒業旅行だったが、男だけでニヤニヤしながら行こうと思っていたのに女性陣もついてきて、そのうえ意外と楽しんでいて驚いた。
熱海秘宝館の女性客の割合は正確にはわからないが、参考までに、「おんなの遊園地」を自称していない「嬉野武雄観光秘宝館」ですら2011年~13年は約4割が女性客であったという(137ページ)。
秘宝館が女性をターゲットにした時期は「観光の女性化」の時期と重なる、というのが妙木の見立てだが、現在の女性客の増加は、「エロの女性化」「アングラの女性化」が進んだ結果といえるかもしれない。

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 話は変わってここからは私の勝手な空想だが、秘宝館が楽しめるカップルは長続きするだろうと思う。

 たとえば、ディズニーランドでデートをすると、長い待ち時間を楽しませてくれるセンスや、歩き疲れを気遣うといった優しさを測れるなどと聞いたことがある。
単純なエンターテイメントの完成度でいえば、秘宝館はディズニーには絶対に適わない。
しかしだからこそ、パートナーと2人でその冴え渡るB級感・シュール感をリスペクトし、アングラな性のアミューズメントパークを楽しめたならば、かなり深いところで価値観が一致していることを確かめられるはずだ。
ちなみに秘宝館を出てすぐの展望台には、「愛錠岬」というマジのカップル向けスポットも用意されている。

 もちろん、友達と行っても同様である。
「友達と登って、恋人と降りてきた。」とは東京スカイツリーの素敵なキャッチコピーだが、熱海秘宝館には「友達が、フレンドになった。」というコピーがある(参考)。いかようにも深読みできるが、秘宝館はつまり、そういう空間なのである。

 さあ、誰と行くか。その吟味から秘宝館の愉しみは始まっている。
大勢でわいわい、2人でしっぽり。いざ行かん、熱海秘宝館。

Text/服部恵典

次回は<交差する視線――AV女優と目が合う〈俺〉は何者なのか?>です。
ポルノを研究するこの連載で、今までAM読者の皆さんといっしょに考えてきたのは、視聴者の視線。しかし、次回分析するのは、被写体になっているAV女優の視線です。AV女優がカメラを見て視聴者と「目が合う」パターンが5種類あり、しかもその中にはAVが独自に磨いてきた技法があるようです!