女性は男性よりストーリー重視?

 まずはじめに、「女のエロスイッチは視覚ではない」仮説に対する、「女性向けAVがあるんだから女性も視覚で興奮するんじゃないか」という反論について。
実際、この反論に対する反論は容易だろう。「女性向けAVのドラマパートの長さは、ストーリーを重視する女性たちの好みを表しているのだ。男性の身体に視覚的に興奮しているのではない」と言えばいい。

 いや、でも、と私は思う。
男性向けAVで性行為以外のシーンが短いのは、男性がストーリーやシチュエーションなしでも身体に直接興奮できるからなのか?
たしかにそういう面がないとは言わないが、男性向けAVにシチュエーションがないと言い切るのは事実誤認であるように思われる。
考えるに、男性向けAVは、長い時間をかけて洗練されていった結果、制作者と視聴者の間でかなり複雑な「お約束」が共有され、ストーリーによる長ったらしい説明が不要になっているだけなのではないか。

 巨乳のメイドは何でも言うことを聞いてくれるし、水泳部に入部した男子が自分一人だったらプールサイドで複数プレイできるし、マッサージ店で勃起したら店員は必ず抜いてくれるし、利き手を骨折して入院しているならば看護師が自慰を手伝ってくれる。
そこに「なぜ?」はない。「そういうものなのだ」というお約束の体系が強固に広範に備わっているのが男性向けAVなのであり、すっきりと省略された空白のシチュエーションを、男性視聴者はほぼ間違えることなく想像で埋めることができるのである。

 もしくは逆に、「男性向けAVには、ストーリーもシチュエーションもちゃんと書いてあるぞ」という答え方も出来る。その一例として、「Hunter」など一部のメーカーには、恐ろしく長いタイトルが最近多い。
たとえば『小・中・高と全く友達が出来なかった僕は、誕生日を家族以外に祝ってもらったことがない。さすがに20歳の誕生日なのに可哀想だと姉が勝手に気を遣い、姉の友人を集めてくれた。でも、ただ飲みたいだけのタチの悪い姉の友人たちは祝うどころか、どんどん酔っ払って主役が誰だかわからないただの飲み会状態。やっぱりかと落胆していたら、じゃ誕生日プレゼントあげちゃう!とパンチラ胸チラのバースデーサービス連発!で勃起!さらに「どうせ童貞なんでしょ?誕生日のイイ思い出作ろうか」と夢の3Pが2回!さらには4Pが1回!計7人(ひとりは姉)とのセックスを体験!』がある。
このように、適度なベタさとオリジナリティがあるストーリー、シチュエーションがタイトルに全部ぎゅっと詰まっているのだ。しかも「(ひとりは姉)」と括弧で添える細やかな気配り。
このおかげで男性は、性行為シーン以外をすっ飛ばしたとしても、SILK LABOなどの女性向けAVのストーリーが伝えるのと同程度に複雑なコンテクストのもと、セックスを観ることが可能なのである。
ここにHunterとSILK LABOの違いはただひとつ、「ネタバレ」があるかどうかしかない。

 しかも一方で、女性向けAVの脱ストーリー化も始まってきた。
2016年5月に発売されたばかりの『Black or White ITTETSU』は、みぃみぃさんの紹介記事にあるとおり、「ドラマもシチュエーションもなく、男女がいきなりセックスを始めるというチャレンジングな作品」である。
そもそも、ストーリーのない女性向けAVの例を挙げて説明せずとも、男性向けAVのほうが好きだという女性も多いだろう。
「男のAVにストーリーは要らない。女のAVはストーリー重視」と特徴を述べるのは、別に間違いだと言い切りたいわけではないが、そろそろ単純過ぎるまとめ方になってきている。

前後の連載記事