「正しいセックス」は存在しない?
しかも内田隆三は同書で、このようにも言っている。
ポルノ、それは砂の味がする〈性〉の現実である。人はこの現実を偽物ではないかという。だが、この現実は偽物や紛い物であることを擬装することを通じて、偽物などどこにもなく、ひたすら現実しかないことを隠しているのである。(127ページ、強調筆者)
我々は男性向けAVを観て「こんなセックスは実際にはありえない」と冷笑する。その態度はまあ正しい。当然、レイプや痴漢行為は実際にはありえてはいけないものであり、ファンタジーにとどめておくべきものだ。
だが忘れてはいけないのは、AVの世界が「間違ったセックス」で溢れているように見えたとしても、「正しいセックス」「本当のオーガズム」などといったものは、どこにも存在しないということだ。
レイプや痴漢行為、顔射や痛みを伴う愛撫も、「○○は間違っている」と言い出す人々がいるから「間違ったセックス」として構築されるのだ。つまり、人間の存在より先に最初から「間違ったセックス」であるようなものは存在しない(ただし、このことを単純化して「レイプは間違ったセックスではない」と考え、有害性を弱めるようなことは絶対にあってはならない)。これは「正しいセックス」も同様だ。
「正しいセックス」を映していないということは、男性向けAVへのカウンターとして現れた女性向けAVに関してもいえる。
つまり、「間違ったセックス」のように見える男性向け作品の代わりに女性たちが制作したAVも、また別の形の「現実」であるに過ぎず、「真実」ではない。
正しい〈性〉、最高の〈性〉などどこにも存在しないという、このいささか悲観的な事実は、実はとあるハウツー動画が奇妙な形で述べている。
その動画というのが、さきほど「AMでも人気である」といった『Body talk lesson for couples』だ。