盗撮カメラが女性向けAVで果たす役割
前回の記事で指摘したように、女性向けAVの画面構成の特徴は、「男女」を第三者視点から捉える「広がり」の配置だった。盗撮カメラが視聴者に提供するのは、まさしくそのような視点なのである。
他方、オリジナル作品のクライマックスであるレイプシーンは、男優の視界と一致するカメラが女優を見つめる、男性向けAV特有の「奥行き」の配置で撮られているのだ。
前回論じた『Undress SELECTION case. 1』の特典映像「SELFIE」にも盗撮カメラが使用されていたことをご確認いただきたい。 他にも、「GIRL’S CH」オリジナル動画「恋愛ウォッチ -カップル盗撮-」シリーズや、SILK LABOの「Under One Roof」シリーズも盗撮ものである。
もう少し範囲を広げると『The Best Collection 4』特典映像の「Face to Face 5th season -another chapter-」も、盗撮とは言わないまでも、固定カメラを使った撮影だ。
これらの女性向け作品に共通するのは、盗撮特有の後ろめたさや背徳感が感じられないということである。
映っているのは、カメラマンや監督がその場にいないがゆえに現れた、明るく親密に愛し合う男女のリアリティのある(ように見える)セックスだ。
盗撮カメラは女性向けAVにおいてそのインモラルさが抑えられ、「広がり」の配置と自然なセックスを視聴者に提供するものへと、機能が変えられているのである。
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ところで、当初の問いは「『男性向けAVを女性向けに編集する』とは一体どういうことなのか?」であった。
その答えの端緒だけでも掴むことができた今、考えてみたいのは、「『男性向けAVを女性向けに編集することができる』とは一体どういうことなのか?」という問いだ。
最初から女性をターゲットにつくられたAVであるSILK LABO作品を私が初めて観たときに思ったのは、やはり、女性向けと男性向けでは全然違うなということだった。
しかし、「GIRL’S CH」のやり方を見ていると、男性向けアダルト動画は、確かに女性向けに編集が必要な程度には女性向けアダルト動画からは遠いけれども、女性向けに編集すれば女性も楽しめる程度には女性向けアダルト動画に近いといえるのではないか、と思えてくる。
私は(私たちは)この連載および研究にあたって、男女の相違に目を向けるだけでなく、実は男女の類似にこそ目を向けなければならないのだろう。
Text/ 服部恵典