AV女優がもつカメラは何を映すか?男女間の不均衡な眼差し

AVに見る男女間の不均衡な眼差し

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この社会においては大方の場合、男は見る主体として、女は見られる客体として役割を与えられ、眼差しは男女の間で不均等に割り振られている。

このことは、フェミニズム理論を大仰に持ち出すまでもなく、生活の中で実感としてきっと分かっていることだろう。肌の手入れ、ムダ毛の処理、毎朝の化粧……美を保つためのこのような些事がいつでも「男」のためになされているわけではないにせよ、なぜ女ばっかりこんな面倒なことを、と思った経験は間違いなくあるはずだ。

見る/見られるの視線の不均衡が最も顕著に表れる場が、ポルノ、とりわけ異性愛男性向けのAVだ。その特徴は、視聴者の視線が女性の裸体を射抜くように、男優を手前、女優を奥に配置する「奥行き」の画面構成であり、これを可能にするのが「男性主観」や一人二役でカメラマンが男優を兼ねる「ハメ撮り」といった技法である。

こうした技法により、見るに堪えない男たちの身体は画面からはみ出し、視聴者は美しい女優の身体だけに集中することができるようになる。
補足すると、男性向けAV市場にもごくまれに、男性視聴者を女性主観映像にいざなう作品や、女優がカメラのコントロール権を持つ作品がある。

東大院生のポルノグラフィ研究ノート 服部恵典 東大 院生 東大院生 ポルノグラフィ 研究 (図1)「上原亜衣ちゃんとレズれる!DVD」

前者の例として『上原亜衣ちゃんとレズれる!DVD』(木村真也 2013、SODクリエイト)(図1)、『女の子しか出てこないヌキやすさを追求したオナニーサポートDX』(K*WEST 2015、ムーディーズ)(図2)など、後者の例として『ワケアリ現役爆乳女子大生達の危険日中出しオフ会』(監督不明 2014、OPPAI)などが挙げられる。

東大院生のポルノグラフィ研究ノート 服部恵典 東大 院生 東大院生 ポルノグラフィ 研究 (図2)「女の子しか出てこないヌキやすさを追求したオナニーサポートDX」

映像は誰の視界か、カメラのコントロール権は誰のものか、何が映っているか、機会があればその目で詳しく確かめてほしい。

想定を反して、これらの作品の場合でも、画面を占めているのは女性の裸体なのだ。男性向けAVの場合、カメラの視界と男優の視界が重なるときだけでなく、カメラの視界と女優の視界が重なるときも、画面に映るのは女性なのである。

さて、ここからが本題だ。
見る男/見られる女という役割配分が最も分かりやすく表れる場が男性向けAVだとすれば、この権力関係を逆転するかに思われる女性向けAVには、一体何が映っているのか。