股の間に入りこむと、彼は性器を貪り始めた/欲望の部屋へようこそ『楽園の罠』(3)/AM官能小説

幻冬舎×AMが特別コラボ!危険な官能小説をお届けします。

第1回 ミステリアスな滞在者
第2回 危険な香りに誘われて

【あらすじ】
南の島へ夫と旅行に来た彩夏は、偶然出会った駿に惹かれていく。出会った翌日、彩夏は夫に嘘をついて彼のヴィラを訪れてしまう。プライベートプールで無邪気に泳ぐ駿に誘われるまま、一緒に泳いでいた彩夏は、いつの間にか全裸でプールに取り残されたことに気づくのだった。そんな彩夏のところへ、駿ではない人の気配が……。

幻冬舎 楽園の罠 真野朋子 AM 小説

第3回 欲望の部屋へようこそ

 気配の正体はホテルの従業員だった。樹木の手入れをするためなのか、脚立にでも上っているらしく垣根から浅黒い顔が見えた。

 彩夏は必死でビーチチェアの陰に隠れ、身を縮めるようにしながら従業員に助けを求めた。とても恥ずかしいけれど、彼に頼る以外に方法はない。ひどく不様だが「ハロー」と声をかけ、彼が気づいてこちらを見ると、英語を交えたジェスチャーで自分の窮状を訴えた。若い男は不思議そうな顔をしていたが、やがて状況を飲みこんだのか薄ら笑いを浮かべながら脚立を下りた。裸で泳いでいたら閉め出されてしまった間抜けな女と思っただろう。

 垣根で姿は見えなくなったが、従業員は玄関の方に回って部屋の中の駿を呼んでくれたようだ。チャイムの音が2度響くのが耳に入ったので、彩夏はもう一度プールに入った。生ぬるいはずのプールの水が、今度はひどく冷たく感じた。
「悪い、悪い。忘れてたわけじゃないんだけど、飲み物でもどうかと思ってさ」

 引き戸ががらっと開いてバスローブ姿の彼が笑いながらやって来た。
「あの、タオルは?」

 彩夏は首まで水に浸かりながら言った。
「ああ、そうだったね」

 バスタオル1枚置いてあればこんなことにはならなかったのに、わざと2枚とも持って行ったのだろうか。彼にからかわれているのか、よくわからなくなっていた。
「さあ、おいで」

 バスタオルを大きく広げて、プールから上がった全裸の彩夏を素早く包みこんだ。
「すごく恥ずかしかった」

 泣き出しそうになっている彩夏を彼は強く抱き締めた。
「だれに? あの男は従業員だよ。どうってことはない」
「裸を見られたかも」
「ほんとにごめん。あっちでシャワーを浴びてくるといい」

 バスルームを借りてシャワーを使ったが、広々とした大理石の造りはこの上なく豪華で、彩夏の部屋のそことは比べようもないぐらいだった。

 棚にはフェイスタオルやバスタオルがふんだんに置かれていて、バスローブもあった。

 彩夏は丁寧に髪と体を拭きながら大きな鏡に全身を映してチェックした。自分のプロポーションには満足している方だが、知り合ったばかりの男に全裸を見られるという体験は初めてだ。もちろん素っ裸でプールに入ったことも。夫は何も知らないと思うと、それだけで気分がよかった。

 彩夏は彼と同じバスローブを羽織ってバスルームから出た。

「さあ、ここへ来て。コーヒーを淹れたから飲んでいって」

 ソファに座っていた彼が手招きした。テーブルにはマグカップに注がれたコーヒーが湯気をたてていた。
「あの、私の服はどこです?」
「皺にならないように、あっちの部屋に掛けてあるよ」

 指さしたのは奥のベッドルームの方だった。ドアの向こうはどんな部屋なのか興味がわいてきた。

 コーヒーを飲み終えてしばらくして、彩夏はゆっくりと立ち上がった。
「そろそろ失礼します。服を……」
「ああ、こっち」

 彼が妻と共にしているベッドルームのドアが開いた。リビングの方は南国風の明るいインテリアだが、こちらはだいぶ落ち着いたダークな色合いで統一されていた。黒っぽいグレーのベッドカバーがかかったキングサイズのベッドが真ん中に陣取り、窓には遮光カーテンがぴったりと引かれていて夜のように暗い。ベッドサイドのランプだけが唯一のあかりだった。
「どこです? この中?」

 彩夏がクローゼットに近づくと、ふいに後ろから抱き締められた。服が掛けてあると言ったのはこの部屋に誘導するためだったようだ。

 ベッドに倒れこんだ拍子にバスローブの前がすっかりはだけて胸が露になった。彩夏は自分のバストの形やサイズは悪くないと思っているが、夫がさほど気に入ってくれていないことに不満があった。愛撫もすぐにやめてしまう。

 けれども駿はすぐさま食らいついてきたし、片方は掌で包みこむようにじっくりと感触を味わっている。彩夏はすでにとろけそうになりながら小さく喘いだ。
「……感じてる?」

 顎を震わせて何度か頷いた。前戯だけで天にも昇るような気分だ。
「痛いっ、やめて……」

 短く叫んだのは、彼が歯をたててきたからだ。小さく固まった突起をカリッと噛んだのだが、敏感な箇所なのでついオーバーに反応してしまった。
「ごめん。つい夢中になって」

 彼の頭を胸に抱くと、硬くて短い髪がちくちくと触れて適度な刺激になった。だが彼はすぐに顔をずらしていって下腹部に辿り着いた。すでに恥ずかしいぐらいにぬかるんでいるそこを確かめるように、有無を言わさず割り開いた。彩夏は抵抗せず、下半身の力を抜いて彼の行動にただ従った。

 股の間に入りこむと、彼は顔をぴたりと付けるようにして性器を貪り始めた。
「はあ……もう、だめ」

 犬のように大きく舌を使ったかと思うと、繊細にひらひらと小刻みに動かしてみたり、彼の舌づかいは見事だった。夫はめったなことではオーラル・セックスなどしてくれないので、彩夏はひどく興奮していた。

 しばらくして彼は急に顔を上げたかと思うと、自分のローブを勢いよく床に脱ぎ捨てた。いよいよ始まると思うと彩夏はそれだけで身悶えしそうになり、軽く目を閉じて待った。受け入れ態勢はもう十分に整っていた。
「あ、何するの……」

 ハッとして目を開けて彼を見たのは、いきなり荒っぽく手首を掴まれたからだ。彼はバスローブのヒモを器用に使って、彩夏の両手首を胸の上あたりできつく縛ったのだ。
「ほんの遊びだよ」

 そう言い放って見下ろした彼の視線には、今までと違った光が宿っていたのを彩夏は見逃さなかった。

【つづく】

Text/真野朋子
幻冬舎×AM特別ページ