そんな中、例の「お客さんに経験人数を聞かれたら『片手で数えられるくらい』と答えよ」という教訓(！？)が飛び出したわけです。
キャバクラで働くのは初めてでも、キャバクラで働こうと考えるくらいの女の子たちですから、男性経験はそれなりにお盛んな者ばかり。車内は爆笑の渦に包まれました。「片手って5人以下ってこと(笑)？」「片手どころか、両手両足で数えても足りないんですけどぉ～(笑)」みたいな空気感です。

　尚、当時の筆者は意外にも処女だったので、片手で数えられるどころか、彼女たちと同じ土俵にすら上がれない身分でした。とはいえ、処女コンプレックスを持っていた筆者は、彼女たちと同じように、「5人以下とかって高校生じゃあるまいしー(笑)」と、ひたすら話を合わせましたけどね。
この翌月、筆者は初体験を迎えることになるのですが、その後のヤリマン人生は、もしかしたら彼女たちの言葉に影響されたのかもしれません。「片手で数えられるほどの経験人数は野暮ったい」「最低でも両手両足で数えられるほどの経験値を積まねば！」と。

　けれども世の男性は、両手両足で数えても足りないほどのセックス経験がある女性よりも、片手で数えられる程度の女性を好むのです。あのときのドライバー男性が言う通りなのだと思います。そして、世の女の子たちは、その教訓を、いちいち言われなくても、ちゃんと守っているということなのでしょう。

　願わくば、「1～3人」と回答した女性たちの、その内訳が、セフレだとか行きずりの相手ではなく、愛する彼氏であってほしいと思った次第です。

　そのうえで、ちょっとだけ厳しい言い方をするならば、「付き合う前にセックスしたくない」という言葉は、両手両足で数えても足りないくらいのセックス経験を踏み、そのうえで「付き合う前にセックスすると、ろくなことがない」と、身をもって知った女性だけに許された言葉である……というふうにも感じたのでした。

Text／菊池美佳子