そんなジューシーな話を聞いていたら、いつの間にかビールもサングリアも飲み干してしまった。
自分自身がしてきた恋愛を振り返れば、どちらの話にも一理あると思えた。
あまりに価値観の違う人には初デートでさよならを言ったこともある。
今の彼氏と恋愛関係が維持できているのは二人の間にある共通点のおかげだろう。
それでも、この恋愛のために妥協した部分もないわけではない。
それはきっと彼氏も同じだ。
二人とも何かを手放した上で今この場所に立っているのに、不思議なことに自分を曲げざるをえなかったと感じたことはほとんどない。
視点を変えてみれば、それは恋愛のための妥協ではなく、恋愛に影響されて自然と自分が変わっていったからなのかもしれない。
完璧主義だった性格は適当な彼氏のおかげで多少は柔軟になった。
考える前に行動してしまう猪突猛進な性格は慎重過ぎる彼氏と良いバランスを取れるようになった。
せっかちの自分とまったりな彼氏は歩くスピードをお互いに合わせるようになった。
恋人という存在が鏡になってくれたおかげで、より自分自身を知ることができた。
だから、変化していくことを自然に受け入れることができたのだろう。
「自分を変える必要のある恋愛をするんじゃなくて、自分の価値観が変わるような恋愛をすれば良いんじゃない?」
酔った勢いに任せてそんな名言が口から飛び出したが、それに続く言葉は何も出てこなかった。
どうしたらそんな恋愛ができるのか。
それが果たして良い恋愛なのか。
自分でさえわかったようでわからなかった。
ただ一つ確かなことがあるとすれば、酔っ払いに会話を乗っ取られた目の前の二人がドン引きしていたことだ。
Text/キャシー
- 1
- 2