「この前やった人がめちゃくちゃ巨根で、隣に並ぶとスタバのショートとグランデくらい違ってなんだか自信無くしちゃった。別にこっちだって小さい方じゃないのに。セックスの度に比較になっちゃうから、ゲイってそこらへん不利だよね」
長い長い金曜日の午後をなんとか乗り切って、行きつけのバーでビール飲みながらゲイ仲間とバッファローウィングにむしゃぶりついてると、必然的にそんな話題になった。
目の前の大皿には大きさや形の違うウィングがどっさり乗っている。
気が付けば、周りのみんなは肉付きのいい特大サイズのウィングを頬張っていて、大皿には小さめのウィングばかりが残っていた。
みんな大きいのが好きなようだ。
いつか、ネットで出会った人と一夜限りのセックスを楽しむことになったものの、いざ会ってみると全然タイプではなかった。
いつもなら「ごめんなさい」と言って立ち去るところだが、そうはいかなかった。
どう断ろうかと迷っている間に向こうは既に裸になっていて、フル勃起で小指ほどしかない相手のチンコが目に入った。
今までいろんな形のチンコを見たが、これはその中でも一番小さかった。
「あいつ、チンコが小さいからフったんだ」と思われてしまうのがどうしても嫌で、逃げ場がなくなった。
結局、チンコの大きさを気にしない良い人になりたくて、何も言えずに最後までやってしまった。
サイズというのは不思議なものだ。
大きい方が良いとか小さい方が良いとか、そんな勝手な価値観がいつの間にか社会で共有されていて、それが個人の好き嫌いにまで大きく影響する。
子供の頃、背の順で並ぶのが苦手だった。背の高かった自分はいつも一番後ろだった。
「背が高くていいね」と人から言われるのもなんだか嫌だった。生まれ持ったもので、自分ではどうしようもないものを褒められても素直に喜べなかった。
一方で、身長が高いことで受ける恩恵も実感していた。
人間は様々な大きさや形で生まれてくるのに、周りからそれに優劣を与えられるのは残酷だ。
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