キャシー
秋になったトロントはすっかり肌寒くなり、熱いラテ片手に雲ひとつない青空を眺めて夏を惜しんでいた。
こうやってひとりになりたい時に限って、会いたくない人に出くわす。
仕事に戻る前に静かな時間を楽しみたかったのに、噂話が大好きな知り合いが目の前に現れた。
相変わらずハイテンションの彼は、聞いてもいないのに嬉しそうに最新ゴシップを届けてくれた。
「あの20代の子、60代の彼氏と付き合ってるんだって! 遺産目当て? セックスどうしてるのかな? 自分より3倍も年上の人とやるなんておかしくない? まさかのオケ専?」
そんな話題には興味がない。
さっきから誰が見てもわかる苦笑いでそれを伝えようとしているが、彼がそれに気付くわけもない。
ラテ休憩なんて取るんじゃなかった。
40歳もの年齢差は確かに頻繁に聞く話ではない。
それにしても、それだけでこんなに騒ぐほどなのだろうか。
情熱的に噂を撒き散らす彼を観察しながら、そんな疑問で頭の中がいっぱいになった。
そういえば、同じく60代の彼氏がいる友人はこんなことを言っていた。
「自分より30歳も年上の人と付き合うことになって、この年齢差はどうすればいいんだって思った。正直に言うと、それが理由で別れようとしたことが何回もあった」
彼らはもう10年以上も付き合っている。
周りからの白いの目も、実際のふたりの年齢差も、ふたりの前に大きな壁として立ちはだかったという。
しかし、それでも彼らは自分たちのペースで恋愛関係をゆっくり築いていった。
その友人の言葉はとても印象に残った。
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