テクニシャンであるに越したことはない。
知識があればできることが増える。手数が多ければいろんな局面に対応できる。コンドームの使い方や性感染症のことを知らなければ、むやみに自分を危険に晒すことになる。
お尻の洗い方も知らずに、適当にシャワー浣腸をしては腸に大ダメージも与えかねない。
そうした必要最低限な知識やスキルは身につけて、リスクは極力避けたい。
しかし、知識ばかり増やしても、テクニックばかり磨いても、セックスが気持ちよくなるとは限らない。
人間皆似てるようで肉体も、性格も、性器の形も、フェチもまったく違う。同じテクニックを繰り返し使っても通用するわけがない。
セックスはコミュニケーションである。それが欠けてしまっては成り立たない。
話しかけたり、ボディランゲージを読んだりして、反応を見て試行錯誤してみる。
セックスが上手いと思わせるためのテクニックなんかは忘れて、相手が気持ちいいと感じられるように励む。そうしてまた新しい発見に出会う。それもセックスの醍醐味だ。
「セックスに手慣れた人にはもうこりごりよ!うぶで何も知らない男の子ってどこに行けば出会えるの?」
少し冷めたコーヒーをすすりながら、懲りない友達はそう言った。
ブランチを食べ終えて、突っ込むのにも疲れたあたしはデザートメニューに手を伸ばした。
Text/キャシー