なぜかタクシーでラブホに向かう女性。妙な性癖の持ち主だった/中川淳一郎

取引先の編集者・小春さんは、2歳年上で、居酒屋で打ち合わせをするのが好きな呑兵衛だった。毎月一度その打ち合わせはあり、決定すべきことが1時間ほどですべて終わるとその後は1時間飲み、お開きとなった。当時あまりお金がなかった僕としては、夕食代が経費で落ちたというのはありがたいことだった。

こうした打ち合わせが3回続いたのだが、4回目は様子が違った。「あ~あ、彼氏にフラれちゃったよ~。浮気がバレた!」と小春さんは愚痴りながらいつもより多くビールを飲んでいた。そして「もうさ、私、フリーだから今日ニノミヤさん、Hしない?」と提案。当然「いいですね、しましょうよ」としか答えないのだが、そこからの行動が妙だった。

なぜか渋谷からタクシーで恵比寿に向かう

渋谷で飲んでいたのに、なぜかタクシーを拾うのだ。「小春さん、円山町はすぐそこですよ。歩いて行けますよ」と言うも「いいからいいから」と僕をタクシーに押し込んだ。指定した行き先は恵比寿。駅近くの飲み屋街の奥にラブホテルはあったからまぁいいけど、なんでわざわざタクシーに乗るんだろう……。渋谷だったら確実に部屋に入れるのに……と訝しがりながらもとりあえず乗った。

すると彼女はすぐ僕にしなだれかかり、手を握ってきた。そして軽くキスをしてきて一度顔を離すと今度は僕の頭をぐわしっと掴み、ディープキスをしてきた。その後は僕の股間に手を置いて目的地までの約12分、我々は黙っていた。

幸いなことに恵比寿のラブホテルには空室があり、その日は2時間コースでやることはキチンと2回やり、「また来月打ち合わせしようねー」と手を振り合って帰った。当然帰りは電車である。

そして翌月の打ち合わせの後も彼女はまだ新しい彼氏はできていないということで、その日もエロをすることになった。この日も渋谷だったのだが、またもや彼女はタクシーを拾う。目的地は下北沢である。