フィリピンの離島で驚いた痴漢

さてこれまでで一番「すっげぇな」とある意味で感心した痴漢はどんなかというと、肉体関係のある知人男性とともに訪れた、フィリピンの離島であった痴漢ではないでしょうか。離島の裏側に、ボートでしかいけない洞窟があるということで、知人男性がボートをチャーターしてくれ、ナビゲートの現地人男性と、その彼の幼い子どもと、わたしの総勢四人で向かったことがありました。無事に洞窟に辿り着いたところで、ナビゲートの男性が「灯りがないと、この洞窟はこんなに暗いんだ」と言いながら、懐中電灯を消したのです。確かに真昼間でありながら、洞窟の中は真っ暗。ひんやりしているので、なんだか不気味……と思った次の瞬間に身体をまさぐられた。
知人男性がちょっかいを掛けてきたと思ったわたしは、「子どもがいるんだから、やめてよね」と、手を振り払ったところ、「どうかしたかー!」と離れたところから知人男性の声が聞こえる。え、じゃあ、いまもわたしの体をまさぐっているこの手は?

まさかのナビゲーターの男性だったのですが、連れの男がいる女に痴漢するって根性入りすぎだし、しかも、自分の幼い息子もそこにいて、よく痴漢なんてできる。呆れると同時に「なんかナビの人に痴漢されたんだけど!」と知人男性にチクりを入れたところ、「俺の連れの女の体を触るな」と英語で注意してくれたものの、ナビゲーターはニヤニヤするのみ。しかも、あまり怒らせてこの洞窟に置いていかれるのもまずい、という空気もあって、結局ナビゲーターのわたしへの痴漢行為は有耶無耶になってしまった。泣き寝入りはしないと決めているけど、生命の危険を感じるとわたしも日和るのだな、と今でも悔しい。

Text/大泉りか