「とんでもない修羅場になりますよ」人妻からの提案にビビった話/中川淳一郎

『はじめてのおつかい』(日本テレビ系)という番組がある。これは、幼児が人生初の一人での買い物をする様子を追うバラエティ番組だ。一体どうすればいいのか分からず泣き出す子どもや、それをなんとか助けようとする店員の様子、そして無事に親の元に戻る様子で「シャンシャン」「感動した!」となる人気シリーズである。

こうした感動話をあげたうえで、いきなり下世話な話になり恐縮だが、僕は「はじめてのなかだし」について考えた思い出を書いてみる。「なかだし」とは「中出し」のことで、要するにコンドームを使わない「生」のセックスをし、そして絶頂を迎えたときに女性の膣の中で射精をすることを指す。

僕は初セックスから13年間、一度も中出しをしたことがなかった。理由は、相手を妊娠させてしまった場合、低収入の自分では責任を負いきれないからである。基本、間男体質で人妻や彼氏持ちばかりとエロをしていたから結婚するのも難しいし、女性が堕胎手術をすると決めた場合の費用も精神的・肉体的苦痛を受けさせるのも自分には苦しい。だから僕は念には念を入れ、毎度セックスのときはコンドームを付けたうえで、射精のタイミングでは膣から外に出し、コンドームの中で射精をしていた

その際、多くの女性は「別にゴム着けているんだから中で出してもいいのに」と言ったが「いやいや、少しでも穴が開いていたらヤバい」と世界に誇る日本のコンドームメーカーを侮辱するかのような発言をするのである。

年上の人妻・木下さんとの出会い

そうした中、「私はピルを飲んでいるから生でいいよ。その方が私もあなたも気持ちがいいから」と言う年上の人妻・木下さんとある飲み会で意気投合し、そのままラブホテルへ行くことになった。ラブホテルに設置されたコンドームは使わないでいいとのことで、これにはさすがに僕もビビった。「いやいや、木下さん、仮に妊娠してしまった場合、とんでもない修羅場になります」と伝えたら「本当に大丈夫。あなた、ピルのことよく分かってないでしょ?」と言われた。

ここでは医学的なことについてあやふやなことは書きたくないが、木下さんの解説を聞くと今日、この日、中出しをしても私は妊娠をする確率はかなり低い、ということが結論のようだ。

「ゴム装着・外射精」をする理由

なぜ、ここまで頑なに「ゴム装着・外射精」をやり続けてきたかといえば、妊娠によって女性の人生が変わることがあるからだ。だからこそ相手のことを考えて絶対に中出しはしてはならないと決めていたのだが、木下さんは「むしろその方がいい」と言う。

僕は避妊を徹底していたので、このときは本当に仰天した。結果的に「本当にあなたってピルとか女性の周期のこととか分かってないのね」と木下さんからは鼻で笑われたのであった。

その後知ったところでは、低容量ピルを正しく使用した場合の避妊率は99.7%で、ゴムより高いものの絶対に妊娠しないわけではないらしい。ピルの効果は避妊だけではなく、月経不順やPMSといった体の不調を防ぐ目的で飲む女性もいる。ピルでは性感染症を防げないため、男たちは女性がピルを飲んでいるからと言って、ゴムをしなくていいと勘違いしないでほしい。

Text/中川淳一郎