夫が私に感謝したこと
このように、どちらが良いとは言い切れないが(炎上避け)今の世相を考慮すると賃貸の方がリスクは少ない。
しかし「個人の価値観による」というのもただの炎上避けというわけではないのだ。
今言った持ち家デメリットは、ほぼ経済的なことでしかなく「QOL」は別である。
使いたくてしょうがないので使った言葉だが「QOL」とは「人生の質」ということである。
安い賃貸に住んだ方が経済的には得かも知れないが、狭い家でケンカが絶えず、子どもが暴れてご近所トラブリューが起こるなど、そのせいで家庭がギスギスしたり崩壊したら、果たしてそれは得だろうか。
家を持つのが夢で、家を持つことで、一家が快適に幸せに暮らせるのだとしたら、やはり買う価値はあるのだ。
そういう意味で、我が家が家を買って良かったかというと言葉に詰まるのだが、最近良い事もあった。
先日、結婚10周年を祝う会食を行ったのだが、その際、こんな機会もないだろうから「私が人間として暮らして生きていられるのはあなたのおかげだ、感謝している」と謝辞を述べたところ、夫も「俺も感謝している」と言ったのだ。
瞬時に「どこに?」と思ったが、夫はやや沈黙あって「あなたのおかげで家が買えた」と言った。
もちろん私が家を買ったわけではない。
おそらく私に感謝していると言われて、夫も反射的にオウム返ししたは良いが「具体的に感謝できるところが何一つ見当たらねえ」ということに気付いてしまい、苦し紛れに言ったのがそれだったのだろう。
確かに、家のローン審査は二人で受けたが、今の金融機関は金を貸したくて仕方がないので、ローン終了が80歳とかでも平気で貸すため、おそらく夫一人でも通ったと思う。
しかし、1つでも夫が私に感謝できる点ができた、という意味で家を買って良かったと思う。
そう思わないと先が長すぎる。
Text/カレー沢薫
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