書店であったナンパ被害
当時の私は婚活中で、まだラマ夫には出会う前のことです。その日は女子会の予定で、待ち合わせよりずいぶん早く到着してしまった私は待ち合わせ場所のすぐ近くにある大型書店に入ることにしました。大きな駅に隣接した、かなり広いワンフロアの書店です。
入ってすぐの新刊コーナーで本を物色して、違う棚を見ようと後ろに一歩下がったとき、男の人にぶつかりました。ぶつかったのは私なので咄嗟に「すみません」と会釈をして、他の書棚へ向かいました。
広い店内を文庫や漫画、雑誌、好みの専門書など、かなり広範囲に移動して30分ほど時間を潰しました。
待ち合わせの時間が迫ってきたので、私は書店を出ることにしました。その書店には出入り口が複数箇所あり、入ったときとは違う、待ち合わせ場所により近い出入り口から外に出ることにしました。
スマホで待ち合わせている友人たちのグループLINEをチェックしながら書店を出た瞬間、「すみません」と声をかけられ、振り返ると、店で最初にぶつかった男性がいました。
驚いて立ち止まった私に、その男性は聞き取りにくい声でボソボソと一目惚れしたので連絡先を教えて欲しいと繰り替えし言いました。
恐怖で思考停止した私は、「いやいや……」(拒否の「嫌」ではなく、相槌や謙遜のときに出る「いやいや」のニュアンス)と口走り、書店へ引き返しました。待ち合わせ場所はすぐそこだったのですが、咄嗟に「より人が多くいる方」に向かっていました。書店の外は見晴らしの良い広場のようになっていて、それなりに人はいましたが私を目で追うことは可能に思えたし、安全なのは書店の方だという咄嗟の判断でした。雑誌コーナーやレジ付近などは「人ごみ」といってもいいくらいに人が密集していましたので。
男性が付いてきていないかを怖すぎて確認も出来ないまま私は書店のなるべく人が多いところをぐるぐると歩きまわりながら、既に待ち合わせ場所に着いていた友人に助けを求めて書店まで迎えに来てもらい、なんとか友人たちと合流することが出来たのでした。
こわかった理由
このナンパ加害の何が怖いかというと、最初に新刊コーナーでぶつかったときから私が書店を出るまで、恐らくずっと私の後を付けてきていたのだろうということ(出入り口が複数ある店舗だったので、出口で待ち伏せしていたとは考えにくい)。もしかすると、最初にぶつかったときから何かの目論見があって、過剰に私に身体を寄せていた可能性があるということです。
もう3年ほど前のことになりますが未だに思い出すと、時間が経って薄まったとはいえ恐怖で何ともいえない嫌な気持ちになります。
これをナンパ被害といわずに何という。
声をかけた本人にそのつもりがなくても、ナンパは加害とは言えないでしょうか。
余談ですが、この迎えにきてくれた友人は以前にコラムに書いたYちゃんで、彼女は「変な男に絡まれて本屋から動かれへんから助けにきてくれ」という私のSOSに真っ先に反応してくれる誠実な人なのですが、同時にミソジニー男の価値観を内包してもいるので、開口一番「みみこ可愛いねんから気ぃつけや!」と言い放ち、私を呆れさせもしたのでした。可愛くあるのは誰にも侵しがたい私の権利やし、あとこの状況で何をどう気ぃ付けえっちゅうねん。