不毛すぎる年齢の話

和久井は普段、特に年齢を口にしません。
それは「私は若い人と同じつもりだから」ということじゃないんです。
自分が若い頃におばさまたちから、
「もうアラフィフだし……」
「もう若くないし……」
「××なんて歳だからできないわ……」
とか口癖のように言われて、めっちゃ面倒だったからです。
そして「それって言ってもしょうがないことだよね」って思ってたからです。

「若くていいわね~」とか言われて、どう返事をすればいいんですかね。
「そうですね、あなたと違って代謝もいいので、見た目も美しくて健康なんです」でしょうか、ケンカ売ってますね。
「そんなことないですよー」って返事を期待した会話ってそもそもが不毛です。

「あなたはまだ若いからわからないと思うけど」みたいな年齢をベースにした説教も「うるせえババア」と思ってたので言いません。誰だって、自分を見下すような人よりも、自分を認めてくれる人と付き合いたいじゃないですか。
くだんの彼のお申し出をOKしなかったのは、年齢のせいではなくて、単純に彼を尊重するのが難しいと思ったからです。

婚活サイトに「若く見られるんです」と書いてる人もよく見かけます。写真見ればわかることを何故わざわざ書くのでしょう。
そもそも、若く見えるかどうかを判断するのは自分ではなくて他人なので、自分から言うことじゃないですよね。

昔、「若さだけが取り柄だ」という男子がいたので、「それじゃ10年後はうんこだね」って言っておきました。

若いアピールも、年寄りアピールも、若見えアピールも、なにかメリットがあるんでしょうか。
産まれた家庭や環境や美醜や、頭の良さや、人間のほとんどすべてが不公平な中、唯一公平なのが時間、年齢です。誰もが等しく与えられて、毎年1歳ずつ年齢が増えていく。

和久井が今アラフィフなのは、なにか悪いことをしたからでも、運が悪かったわけでもない。誰もが普通に与えられることだから、恥ずべきことでもない。
そんなことをわざわざ言及して、なにがおもしろいんだろうと思うんです。

そりゃね、更年期情報とかは同年代としたりしますよ。第二次成長期に戸惑ったのと同じ感じで、必要な情報は年齢によって違います。
でも年齢というしがらみから解き放たれると、世界がグッと広がるんではないでしょうか。

Text/和久井香菜子

初出:2018.08.25