同じものを見ればさすがに会話がある
大体PCやスマホは主に「1人用」である。だがテレビの場合は複数で鑑賞可能だ。
我々夫婦は共通の話題がないことに定評があるが、さすがに同じ時間に同じものを同時視聴すれば「今見ているテレビ」という共通の話題が出来るのだ。それと同じ理由で夫との行楽は映画が多い、今まさに見た映画の感想、という会話が生まれるからだ。
ただ、夫は全くオタク気質ではない。
先日アベンジャーズエンドゲームを見たのだが、これがオタク同士なら、如何にト二―スタークがSSS(シコシコシコ)か。どれだけピーターがチャーミングで「このピーターがサムライミ版のメリージェーンと出会いませんように」と神に祈らずにいられないか。ウサギ氏ことロケットに激しく抱かれたいか、など話は尽きないし、時間が足りないどころか寿命が足りない。
しかし、夫と映画の感想を話す時は、そういう「キャラ萌え」の話は完全に封じられている上、夫自身「拙者の解釈では…」と、ストーリーなどについていろいろ言いたいことがある人ではない。よって「映画って本当に良い物ですね」程度の感想しか言えないのだが、それでも帰路の半分ぐらいは会話がもつ。
よって、週1、2回、夫と一緒に夕飯を食べる時は大体テレビがついている。
しかしここで気をつけなければいけないのは「私の性格が悪い」という点だ。
例えば「プロ野球戦力外通告」を一緒に見た場合、感想を思ったまま言ってしまうと「最近の戦力外通告を受ける選手は割と先のことを見越している奴が多くてつまらない」「本当に野球やるぐらいしか全くつぶしがない人間が出て来て欲しい」「もっと生活に困っている感を出してほしい」「嫁が化粧バッチリすぎる、余裕があるか、夫の事よりカメラを意識していやがる」「嫁がブスだと無条件にアガる」など「性格が悪い」としか言いようがない感想ばかりになってしまうのだ。
つまり、テレビを一緒に見ることにより、話すことは出来るのだが、話せば話すほど、配偶者に己の性格が悪いことが露呈してしまうのだ。
しかし人間性を疑われる感想を排除すると「何も言うことはない」ということになってしまう。よって、一緒にテレビを見ていても、我々は基本無口である。
もしかしたら、夫も性格の悪い感想を抑えているから無口なのだろうか、だったら気にせず言って欲しい、その方が盛り上がるから。
Text/カレー沢薫
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